分散と標準偏差 — ばらつきを1つの数字にする
2つの店舗の日販が、どちらも「平均6万円」だとします。でもA店は毎日6万円前後で安定、B店は2万円の日と10万円の日が交互——平均が同じでも、商売の姿はまるで違います。
この違いを1つの数字にするのが分散と標準偏差。平均だけでは見えない「ばらつき」を測るものさしです。
分散と標準偏差はどう計算し、正規分布の「±1σに68%」はどう使うのでしょうか。
平均からのズレを二乗して平均する——それが分散です
手順は3歩です。①各データの平均からのズレ(偏差)を出す。②ズレをそのまま平均すると打ち消し合ってゼロになるので、二乗してから平均する——これが分散。③二乗したせいで単位が変わっている(万円→万円²)ので、平方根で元の単位に戻す——これが標準偏差(σ)です。
例:日販が3・5・6・7・9(万円)なら平均6、偏差は−3・−1・0・1・3、二乗和は9+1+0+1+9=20、分散=20÷5=4、標準偏差=√4=2万円。「平均6万円・日々のブレはだいたい2万円」と読めます。
正規分布——±1σ・±2σ・±3σの3つの数字で世界を読みます
身長・測定誤差・多数の要因が足し合わさる量は、平均を中心に左右対称の釣鐘型——正規分布に近づきます(平均・中央値・最頻値が一致)。使い方はほぼこの3つの数字です:データの約68%が平均±1σ、約95%が±2σ、約99.7%が±3σに収まる。
先ほどの店(平均6・σ=2)なら、日販は約68%の日が4〜8万円、約95%の日が2〜10万円——「±2σの外はめったに起きない(約5%)」という感覚が、品質管理(管理図の3σ)や需要予測の土台になります。なお代表値の使い分けも出ます——外れ値に強いのは中央値(平均は高額の1件に引っ張られる)です。
「分散と標準偏差の取り違え」と68/95の入れ替えが的です
定番の誤り肢は単位の取り違え——「標準偏差は偏差の二乗の平均である」(それは分散。標準偏差はその平方根)。分散は単位が二乗になっている、と覚えると混ざりません。
±1σ=約68%と±2σ=約95%の入れ替えも的です——「±1σに約95%が収まる」は誤り。なお分散の分母には、データ全体(母集団)ならn、標本から推定するならn−1(不偏分散)を使う流儀があり、特に断りがなければnで割る定義が基本です——「n−1で割る場合がある」こと自体を問う肢もあります。
顧問先の販売データでこのものさしを使うと、助言が一段具体的になります——「平均日販は同じでも、B店は標準偏差が大きい=仕入と人繰りの読みが外れやすい店」。ばらつきが大きい店は欠品と廃棄の両方が出やすいので、需要予測より先に「ばらつきを生む曜日・天候要因」を特定するのが定石です。安全在庫の計算(運営管理で学んだ√の式)に入っていたのも、この標準偏差です。
冒頭の問いに答えます。分散は偏差(平均からのズレ)を二乗して平均したもの、標準偏差はその平方根で単位を元に戻したもの——例の3・5・6・7・9なら分散4・標準偏差2です。正規分布では±1σに約68%・±2σに約95%・±3σに約99.7%が収まり、「±2σの外はめったに起きない」が品質管理と予測の土台になります。次は、2つの量の「関係」を測る——相関と回帰へ。