クラウド3モデル — 更地か、キッチン付きか、レストランか
食事を用意する方法は3つあります。更地を借りて家から建てる(全部自分)。設備付きキッチンを借りて料理だけする(調理は自分、設備は大家)。レストランで食べるだけ(全部お店)。
クラウドの3モデルはこれと同じ構図です——どこまで自分で面倒を見るか(管理範囲)の線引きが、IaaS・PaaS・SaaSの違いのすべてです。
IaaS・PaaS・SaaSでは、利用者が自分で面倒を見る範囲はどこまででしょうか。
下から上へ、自分の仕事が減っていきます
IaaS=更地。仮想サーバー・ストレージ・ネットワークだけ借りて、OSから上は全部自分で管理します(例:AWS EC2)。PaaS=設備付きキッチン。OS・ミドルウェア・開発環境まで用意されていて、自分のアプリケーションだけ作って載せる(例:Heroku)。SaaS=レストラン。完成したアプリをそのまま使い、自分が管理するのはデータと設定だけ(例:Gmail・Salesforce)。
配置の4モデルとNISTの5特性まで揃えて1セットです
「誰のためのクラウドか」というデプロイメントモデルも4つ——パブリック(不特定多数に提供)・プライベート(1組織専用)・コミュニティ(共通の関心を持つ複数組織で共同利用)・ハイブリッド(パブリックとプライベートなどの組合せ)です。
そもそも何をもって「クラウド」と呼ぶか——米国NISTの定義では5つの特性を持ちます。①オンデマンド・セルフサービス(人手を介さず自分で調達)②幅広いネットワークアクセス③リソースの共用(プーリング)④迅速な拡張性(使う分だけ即座に増減)⑤サービスの計測可能性(従量で測って課金できる)。「借りた分だけ払う電気・水道のようなIT」がこの5つの言い換えです。
サービス例の帰属と、管理範囲の線引きが定番の的です
定番の誤り肢はサービス例の帰属替え——「GmailはPaaSの例である」(SaaSが正しい。完成品をそのまま使うから)。AWS EC2=IaaS・Heroku=PaaS・Gmail/Salesforce=SaaSで固定してください。
管理範囲の線引きのズラしも頻出——「IaaSではOSやミドルウェアは事業者が管理する」(それはPaaS。IaaSはOSから上が利用者の仕事)。デプロイメントモデルではハイブリッドとコミュニティの混同が的——複数組織の共同利用はコミュニティ、パブリック+プライベートの組合せがハイブリッドです。
顧問先の「自社サーバーが古くなった。クラウドに移すべきか」には、責任分界のものさしがそのまま使えます——IT担当者がいない会社に更地(IaaS)を勧めると、OSの保守という庭の手入れが丸ごと残ってしまう。会計・給与・グループウェアのような定型業務はSaaSに寄せるのが第一候補、自社の強みが乗る特注部分だけPaaS/IaaSを検討する、が中小企業の定石です。月額課金は「資産を持たずに費用で払う」——財務のB/Sを軽くする話にもつながります。
冒頭の問いに答えます。IaaSはOSから上を全部自分で(更地)、PaaSは自分のアプリだけ(設備付きキッチン)、SaaSはデータと設定だけ(レストラン)——上へ行くほど利用者の管理範囲が狭くなります(配置はパブリック・プライベート・コミュニティ・ハイブリッドの4類型、NISTの5特性が定義)。これで情報の土台は完成——次のWaveは、この土台を守るセキュリティ(暗号と認証)へ。