条件と期限 — 「成就まで止まる」のか「成就まで動く」のか
「資格試験に合格したら祝い金を渡す」という約束と、「成績が基準を下回ったら奨学金を止める」という約束は、法律上まったく違う仕組みで動いています。前者はその出来事が起きるまで効力そのものが止まっていて、後者は今すでに有効な効力が、出来事が起きた時点で消えます。この違いを押さえておくと、期限に関する条文もまとめて理解できます。
「〜したら」という約束には、効力の止まり方が2種類あるのはなぜでしょうか。
停止条件は「成就まで止まる」、解除条件は「成就まで動く」のです
停止条件(127条1項)は、条件が成就するまで法律行為の効力そのものが発生しません。合格するまで祝い金を渡す約束に効力はまだありません。解除条件(127条2項)は逆に、成立時からすでに有効で、条件が成就した時点で効力が消えます。奨学金は今すでに支給されていて、成績条件が満たされたときに止まります。
不能・不法な条件には、成立を無効にするか条件だけ外すかの2パターンがあります
成就しようのない条件(不能条件)は、それが停止条件なら法律行為全体が無効になり、解除条件なら条件が付いていないもの、つまり無条件で有効として扱われます(133条)。公序良俗に反する条件(不法条件)は、その法律行為自体が無効です(134条)。
期限の利益(136条)は債務者のためにあるものと推定されます——支払いをまだしなくてよい利益です。放棄は自由ですが、相手方の利益を害することはできません。期限の利益は一定の事由で失われます(137条)。破産手続開始の決定を受けたとき(1号)、債務者自身の行為によって担保を滅失・損傷・減少させたとき(2号、この場合は故意・過失を問いません)、担保を提供する義務を履行しないとき(3号)です。
停止条件と解除条件の効果を入れ替える肢が定番です
第一の手口は効果の入れ替えです。「解除条件付き法律行為は、条件が成就するまで効力を生じない」は誤りです。これは停止条件の説明で、解除条件は成立時から有効です(127条2項)。
第二の手口は喪失事由の主体の混同です。「担保の滅失・損傷・減少による期限の利益の喪失は、その原因を問わず生じる」は不正確です。137条2号が問題にするのは債務者自身の行為による滅失・損傷・減少で、この場合に限り債務者の故意・過失を問いません。
契約書に「〜したときは」という条項を入れる場面は多く、それが停止条件なのか解除条件なのかを明確にしておかないと、当事者の理解にずれが生じます。契約書作成の実務では、条件が成就したときに「新たに効力が生じる」のか「今ある効力が消える」のかを条文の言葉で書き分けることが、紛争予防の基本動作です。
答えです。停止条件は成就まで効力が止まり、解除条件は成立時から動いていて成就で消えます。総則の骨格がここで一巡しました。次は物権——「言った勝ち」ではなく「登記した勝ち」の対抗問題です。