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民法 / 親族相続親族
親族相続 2/3 / 約5分

相続人と相続分 — 「外す」方法と「選ぶ」方法は、手続の重さが違います

被相続人を虐待した相続人や、遺言書を偽造した相続人まで、当然に財産を受け継いでよいのでしょうか。民法は「当然に資格を失わせる」制度と「被相続人が申し立てて家庭裁判所に決めてもらう」制度の、性格の違う2つを用意しました。相続する側にも「そのまま受け継ぐ」「条件付きで受け継ぐ」「一切受け継がない」の3つの選択肢があります。

この5分の問い

相続人を「外す」方法にはどんな違いがあり、相続を「選ぶ」方法はどう異なるのでしょうか。

直感でつかむ

一発退場と、申請による退場があります

相続人を外す2つの制度は、重さがまったく違います。相続欠格(891条)は、遺言書の偽造や、故意に被相続人を死亡させて刑に処せられたことといった重大な事由に該当すれば、手続なしに当然相続権を失います。一発退場です。廃除(892条〜895条)は、虐待や重大な侮辱があったときに、被相続人が家庭裁判所に請求し、審判で認められて初めて効力を生じます。退場には被相続人の申請と裁判所の判断が要るのです。

外す制度の軸欠格=当然失権(手続不要)。廃除=被相続人の請求+家裁の審判が必要。

いずれの場合も、外された人に子がいれば代襲相続します(887条2項)——本人が悪くても、子には責任がないという発想です。

厳密に見る

代襲相続の範囲は、子の系列と兄弟姉妹の系列で違います

法定相続分(900条)は、配偶者は常に相続人で、血族相続人は子→直系尊属→兄弟姉妹の順に配偶者と組みます。配偶者の取り分は、子と一緒なら2分の1、直系尊属と一緒なら3分の2、兄弟姉妹と一緒なら4分の3と、後順位になるほど上がります。かつて非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1でしたが、最高裁が違憲と判断し(最大決平25.9.4)、現行法は同等です。

代襲相続の範囲には非対称があります。子の系列は再代襲を認めており孫・ひ孫と無限に続きます(887条3項)。兄弟姉妹の系列は、889条2項が887条3項を準用していないため、甥・姪までの1代限りです。

相続を「選ぶ」3つの方法も重さが異なります。単純承認(法定相続分どおり無限に承継)、限定承認(923条、相続財産の限度でのみ債務を負う。相続人全員が共同で申述しなければなりません)、相続放棄(938条、初めから相続人でなかったものとみなされる。各自が単独で申述できます)。いずれも自己のために相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述するのが原則です(915条1項)。相続放棄の効力は、登記なくして第三者にも対抗できます(最判昭42.1.20。放棄者は最初から相続人でなかったとみなされ、物権変動そのものが生じないため)。

結論が反転する分かれ目
欠格
当然失権
重大事由に該当した時点で手続なしに失権(891条)
廃除
請求+審判が必要
被相続人の家裁への請求と審判で効力発生(892条〜895条)
分かれ目 「本人が何もしなくても外れるか、申請しないと外れないか」で見分ける。
ここで間違える

「欠格にも審判が要る」が最頻出の誤りです

第一の手口は手続の混同です。「相続欠格が生じるには、被相続人の請求と家庭裁判所の審判が必要である」は誤りです。それは廃除の手続で、欠格は該当した時点で当然に失権します(891条)。

第二の手口は代襲相続の系列の混同です。「兄弟姉妹の子が死亡していても、その孫(大甥・大姪)が代襲相続する」は誤りです。兄弟姉妹の代襲は甥・姪までの1代限りです(889条2項)。

第三の手口は承認・放棄の主体の入れ替えです。「限定承認は相続人が各自単独で申述できる」は誤りで、全員共同でなければなりません(923条)。単独でできるのは相続放棄の方です。

第四の手口は相続分差別の生き残りです。「非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1である」は誤りで、最大決平25.9.4により違憲、現行は同等です。

実務では

「疎遠な親から生前ひどい扱いを受けていた相続人を、他の相続人が排除できないか」という相談は、廃除と欠格の説明から入ります。廃除は被相続人本人が家庭裁判所に請求する制度で、他の相続人が代わりに申し立てることはできません——この当事者適格の理解が誤案内を防ぎます。相続放棄・限定承認の3か月という期間は、遺産の内容(負債の有無)を早期に確認する動機づけとして依頼者に伝える一言です。行政書士は相続関係説明図・遺産分割協議書の作成を担い、家裁への申述書自体は行政書士の職域外(裁判所提出書類の作成は司法書士、代理・交渉は弁護士)という線引きも押さえておきます。

確かめる — 予想してから答え合わせ
この5分のまとめ

答えです。外す制度は欠格=当然失権、廃除=請求と審判が必要という非対称、選ぶ制度は限定承認=全員共同、放棄=各自単独という非対称です。相続人が確定したところで、次は最後の意思——遺言と、それでも動かせない取り分——遺留分です。