嫡出推定と認知 — 母子は出生の事実、父子は推定か届出です
2024年4月1日、家族法の一部が大きく書き換わりました。それまで、婚姻中に妻が産んだ子の父子関係を裁判で争えるのは、原則として夫だけでした。改正はこの当事者の顔ぶれを広げ、また離婚後300日以内に生まれた子が前夫の子と推定されてしまう問題(無戸籍者問題の一因とされていました)にも手当てをしました。
見る制度は2つ、母子と父子で決まり方がまるで違います。
生まれた子と親の間に、法律上の親子関係はどうやって生じるのでしょうか。
母子関係は出産の事実、父子関係は推定か届出で決まります
母子関係は、産んだという事実そのもので当然に生じます。争いになる余地はほとんどありません。父子関係はそうはいきません。婚姻中に生まれた子には嫡出推定という制度で夫の子と推定を及ぼし(772条)、婚姻外で生まれた子には認知という別の手続で父子関係を作ります(779条)。
2024年施行改正は、この推定と否認の仕組みそのものに手を入れました。
否認できる人が、夫だけから広がりました
嫡出推定(772条)は、婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定し、婚姻成立の日から200日を経過した後、または婚姻の解消・取消しの日から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定します。改正前は離婚後300日以内の子が一律に前夫の子と推定され、無戸籍者問題の一因とされていましたが、改正後は母が前夫との離婚後に再婚していれば、再婚後の夫の子と推定されるという手当てが加わりました。
嫡出否認の訴え(774条〜778条の3)は、2024年4月1日施行の令和4年法律第102号により、否認権者が父のみから父・子・母(772条3項により父が定まる場合は前夫も)に拡大され、否認期間も原則1年から3年に延長されました。
認知は婚姻外の父子関係を作る手続です。任意認知は父が届出(781条1項)または遺言(同条2項)で行い、成年の子を認知するには子本人の承諾(782条)、胎児を認知するには母の承諾(783条1項)が必要です。認知の効力は子の出生時にさかのぼり(784条)、いったんした認知を取り消すことはできません(785条)。父(または母)が任意に認知しないときは、子・その直系卑属・法定代理人が認知の訴えを提起でき、父又は母の死亡から3年以内という期間制限があります(787条)。婚姻していない父母が後に婚姻すると、子は嫡出子の身分を取得します(準正・789条)。
施行日の取り違えが最頻出の手口です
第一の手口は否認権者の絞り込みです。「嫡出否認の訴えを提起できるのは夫に限られる」は改正後は誤りです。父・子・母に拡大されています(774条)。
第二の手口は成年の子の認知です。「成年の子を認知するのに、子の承諾は不要である」は誤りです(782条)。逆に胎児認知は母の承諾が必要で(783条1項)、承諾を求める相手を入れ替えた肢に注意してください。
第三の手口は施行日の混同です。成年年齢・婚姻適齢の18歳統一(平成30年法律第59号)は2022年4月1日施行、嫡出推定・否認の見直し(令和4年法律第102号)は2024年4月1日施行——別の2つの法律の施行日を入れ替える肢が定番です。
「離婚してすぐ再婚したのですが、生まれた子の戸籍はどうなりますか」という相談は、無戸籍者問題そのものです。772条の改正により、母が前夫との離婚後に再婚していれば再婚後の夫の子と推定されるため、出生届の提出自体をためらう必要が薄れたことを説明できます。認知の届出書類の作成支援も行政書士の実務動作で、成年の子や胎児が絡む案件では承諾書の要否を最初に確認するのが落とせない一手です。
答えです。母子は出産の事実、父子は推定(婚姻中)か認知(婚姻外)。2024年施行改正で否認権者は父・子・母に広がり、期間は3年に延びました。親子関係が定まったところで、次はその親子が財産を承継する場面——相続人と相続分です。