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民法 / 物権物権
物権 5/5 / 約4分

共有 — リフォームは全員、模様替えは過半数、雨漏り修理は独断です

マンションの管理組合を思い浮かべてください。建物の建て替えのような大改修は総会の決議、外壁の塗装のような模様替えは理事会の決議、雨漏りの応急修理は管理人が独断ですぐに動く——共有物についても、これと似た3段階の同意ルールがあります。2021年改正は、この段階分けの境目を動かしました。

この5分の問い

共有物に対して何かをするとき、誰の同意が必要なのでしょうか。

直感でつかむ

変更は全員、管理は過半数、保存は単独です

共有物への行為は3段階に分かれます。変更行為(建替えのような形状・効用の著しい変更)には共有者全員の同意が必要です(251条1項本文)。管理行為(利用方法の決定など)は持分の過半数で決します(252条1項)。保存行為(不法占拠者への明渡請求など、現状維持のための行為)は各共有者が単独で行えます(252条5項)。

共有の軸変更=全員。管理(軽微変更を含む)=持分の過半数。保存=各自単独

2021年改正(2023年4月1日施行)で、外壁塗装のような軽微な変更(形状・効用の著しい変更を伴わないもの)は、変更行為から管理行為(過半数)に格下げされました。

厳密に見る

持分は「推定」、相続分は「法定」——性質が違います

各共有者の持分は、明らかでないときは相等しいものと推定されます(250条)。推定にとどまるため、証拠があれば覆せます。これに対し、相続分(900条)は法律で定められた割合であり、性質が異なります。

2021年改正では、共有制度の周辺にも重要な新設がありました。所在等が不明な共有者がいる場合に、裁判所の関与を得てその持分を取得する制度(262条の2)・持分を含めて第三者に譲渡する制度(262条の3)。共有物の変更・管理についても、賛否を明らかにしない共有者や所在等不明の共有者がいる場合に、裁判所の関与を得て残りの共有者の同意で進められる仕組みが整備されました(251条2項・252条2項)。共有物分割における全面的価格賠償(共有物を分割せずに、共有者の1人が他の共有者の持分を取得し、価格を賠償する方法)も明文化されました(258条2項2号)。また、遺産共有(相続人による共有)が通常の共有と混在する場面についても、一定の場合に通常共有と同様の分割手続に統一する特則が整備されています(258条の2)。

結論が反転する分かれ目
変更
全員の同意(251条1項)
形状・効用の著しい変更(建替えなど)
管理・保存
過半数/各自単独(252条)
管理(軽微変更含む)=持分の過半数、保存=各自単独
分かれ目 2021年改正で軽微変更が変更→管理へ格下げ。全員一致が必要な範囲が狭まった。
ここで間違える

「共有は全員一致が原則」という思い込みが最頻出の誤りです

第一の手口は管理行為の全員一致化です。「共有物の管理に関する事項は、共有者全員の同意がなければ決定できない」は誤りです。管理行為は持分の過半数で決します(252条1項)。全員の同意が必要なのは変更行為です。

第二の手口は軽微変更の据え置きです。「外壁塗装のような軽微な変更にも、共有者全員の同意が必要である」は誤りです。2021年改正で軽微変更は変更行為の定義から除外され(251条1項括弧書き)、管理行為として持分の過半数で決することになりました(252条1項)。

第三の手口は保存行為の過半数化です。「不法占拠者への明渡請求のような保存行為にも、持分の過半数の同意が必要である」は誤りです。保存行為は各共有者が単独で行えます(252条5項)。

実務では

「共有名義の実家をリフォームしたいのですが、他の相続人の同意が必要ですか」という相談は、まず行為の分類から始めます。間取りを変える大規模改修なら全員の同意、外壁や設備の更新のような軽微変更なら持分の過半数、雨漏りの緊急補修なら単独で足りる——この分類を説明できると、依頼者の次の一手(誰にどう同意を取るか)が具体的になります。遺産分割協議書の作成支援では、共有状態の解消(現物分割・代償分割・換価分割)の選択肢を整理して示すのも実務の要です。

確かめる — 予想してから答え合わせ
この5分のまとめ

答えです。共有物への行為は変更=全員、管理=持分の過半数、保存=各自単独の3段階で、2021年改正は軽微変更を管理行為側に寄せました。これで物権の骨格が一巡し、民法の選抜論点はここまでで一通り揃いました。