戸籍法 — おめでとうは二週間、お悔やみは一週間です
子どもが生まれたら、役所への届出は14日以内。人が亡くなったら、知った日から7日以内。「おめでとう」の報告のほうが、「お悔やみ」より締切が長い——戸籍法の期間は、この対比で覚えると忘れません。
令和7年度の本試験は、まさに出生届で切ってきました。押さえる軸は3本——期間・届出人・そして「もめたときの行き先」です。
戸籍の主要な届出(出生・死亡・婚姻)の期間と届出人はどう決まっていて、証明書は誰が請求でき、不服はどこへ申し立てるのでしょうか。
期間は「14日と7日」、婚姻には期間がありません
出生届(49条)は14日以内(国外での出生は3か月以内)。届出人は嫡出子なら父または母です。死亡届(86条・87条)は死亡の事実を知った日から7日以内(国外は3か月以内)。届出義務者は同居の親族→その他の同居者→家主・地主・管理人等の順で定められています。
では婚姻届は何日以内でしょうか——実は期間の定めがありません。婚姻は届出が受理されて初めて効力が生じる「創設的届出」だからです。すでに起きた事実を報告する出生・死亡(報告的届出)と、届出そのものが法律関係をつくる婚姻。この性格の違いが「期間の有無」に表れています。
証明書は「身内は無条件・他人は理由」、不服の行き先は家庭裁判所です
戸籍は「夫婦と、氏を同じくする子」ごとに編製されます(6条)。婚姻の届出があれば、夫婦について新戸籍が編製されるのが基本形です(16条)。
戸籍謄本等の交付請求(10条・10条の2)は二層構えです。本人・配偶者・直系尊属・直系卑属は理由を示さず請求できます。それ以外の第三者は、権利行使・義務履行に必要であることなどの正当な理由を明らかにして初めて請求できます。個人情報保護法で学んだ「本人と他人の非対称」と同じ設計思想です。
そして行き先の急所。戸籍事件について市町村長の処分に不服がある者は、家庭裁判所に不服を申し立てます(122条)。行政不服審査法の審査請求は使えません(戸籍法122条が「他の法律に特別の定めがある場合」に当たるためです)。「市町村長の処分だから行審法」という条件反射を、戸籍法は裏切ります。
令和7年度は「3日以内」と「任意記載」で切ってきました
実際の誤り肢を見ておきます。「出生届は3日以内」——誤り、14日以内です。「出生の年月日時分及び場所は任意記載」——誤り、届書の必須記載事項です(49条2項)。子の名に使える文字は常用平易な文字に限られます(50条)。
期間のもう1つの罠は死亡届の起算点です。「死亡の日から7日」ではなく「死亡の事実を知った日から7日」。遠方の親族が後から知った場合を想像すれば、起算点の合理性ごと覚えられます。
「亡くなった父の戸籍を、生まれた時まで全部さかのぼって集めてほしいんです」。相続手続の依頼で、行政書士は職務上請求の枠組みで戸籍を収集します。誰が無条件で請求でき、第三者には何が求められるか——10条・10条の2の線引きは、遺産分割協議書づくりの前提となる、開業初年度から毎週使う知識です。
冒頭の問いに答えます。出生14日・死亡は知った日から7日・婚姻は期間なし(創設的届出)、証明書は身内無条件・他人は正当理由、不服は家庭裁判所へ(行審法は適用除外)。最後のユニットは住民基本台帳法——「挨拶は先に、報告は後で」の引っ越しの型です。