住民基本台帳法 — 挨拶は先に、報告は後で
引っ越しの役所手続には「向き」があります。いまの市町村を出るときの転出届は「あらかじめ」——つまり事前。新しい市町村に着いてからの転入届は「転入をした日から14日以内」——つまり事後です。
挨拶は先に、報告は後で。この型さえ持てば、住基法の期間問題は迷いません。もう1つの主戦場は「住民票に何が書いてあるか」です。
住民票には何が記載され、引っ越しの届出はいつまでに、そして住民票の写しは誰が請求できるのでしょうか。
出るときだけ事前、着いたら・移ったら14日です
3つの届出を並べます。転出届(24条)=あらかじめ(事前に、氏名・転出先・転出予定年月日を届け出る。日数の定めなし)。転入届(22条)=転入をした日から14日以内。転居届(23条・同一市町村内の住所変更)=14日以内。
事前が求められるのは転出だけです。理由も直感的で、出ていく人の情報を先に押さえておかないと、新旧の市町村間で住民記録の引き継ぎができないからです。戸籍法の14日(出生)と数字がそろっているのも、覚える側には好都合です。
住民票の記載事項は「世帯主との関係」の書き方が急所です
住民票(7条)には、氏名・氏名の振り仮名・出生の年月日・男女の別・住所・住民となった年月日・戸籍の表示・個人番号などが記載されます。急所は世帯の書き方です——世帯主についてはその旨、世帯主でない者については世帯主の氏名と世帯主との続柄。令和6年度問題53の正解肢は、まさにこの条文の正確な引き写しでした。
写しの交付(12条以下)は戸籍と同じ二層構えです。本人または同一世帯の者は理由を示さず請求できます(ただし市町村長は、請求が不当な目的によることが明らかなときは拒めます)。それ以外の第三者は、権利行使・義務履行などの理由を明らかにする必要があります(12条の3)。
なお、DV・ストーカー被害者の住所を加害者に知らせないための「支援措置」は実務上重要ですが、住民基本台帳法の本文に直接の規定はなく、不当目的の請求拒否(12条)などの一般規定を土台に、国の通知(事務処理要領)に基づいて運用されています。「法律に明記された制度」と断定する肢が出たら、この点を思い出してください。
令和6年度は「住民票に書いていないもの」を並べてきました
実際の誤り肢は、前年度の住民税の納税額・緊急連絡先・地震保険の資格・海外渡航歴——いずれも7条に規定のない事項でした。もっともらしい「役所が知っていそうな情報」を並べて、条文の記載事項リストとの照合力を試す出題です。
期間側の罠は向きの反転です。「転出届は転出した日から14日以内」——誤り。転出だけはあらかじめです。転入の14日を転出に横滑りさせる肢に注意してください。
「住民票の写し、代わりに取ってきてもらえますか」。許認可申請の添付書類集めで、行政書士は職務上請求の枠組みを日常的に使います。本人・同一世帯と第三者の線引き、不当目的なら拒否という安全弁——12条まわりの設計は、依頼者に「なぜ委任状が要るのか」を説明する根拠そのものです。
冒頭の問いに答えます。住民票の急所は世帯主の書き分け(本人はその旨・他は世帯主の氏名と続柄)、届出は転出だけ事前で転入・転居は14日、写しは本人・同一世帯が無条件で第三者は理由明示。これで諸法令3法の5ユニットが完結です。基礎知識の足切り対策に、個人情報保護法・マイナンバー法のユニットとあわせて通しでドリルしてください。