法の解釈技法と却下・棄却・上訴 — 受付で断られるのと、審査に落ちるのとは違います
訴えを起こしたのに、裁判所が中身を一切見ずに追い返すことがあります。一方で、中身をきちんと審理した上で「あなたの言い分には理由がない」と退けられることもあります。どちらも敗訴には違いありませんが、法律上はまったく別の扱いです。この「却下」と「棄却」の区別は、行政法・民事訴訟法・行政不服審査法を横断する最重要論点です。
拡大解釈と類推解釈はどう違い、却下と棄却、控訴と上告はどう区別すればよいのでしょうか。
受付で断られるのと、審査に落ちるのとは違います
就職試験にたとえると、応募書類の不備で受付段階で断られるのが却下です——中身(面接)まで進めません。書類は受理され面接まで進んだが不採用になったのが棄却です——中身は審理された上での結論です。訴え・申立てが不適法(要件を欠く)なら却下、適法だが理由がないなら棄却、という区別がこれに対応します。
6つの解釈技法と、三審制の骨格を押さえます
法の解釈技法は6つです。文理解釈(文言どおりに読む、最も基本)、拡大解釈(文言の射程内で広く読む)、縮小解釈(文言の射程内で狭く読む)、類推解釈(文言の射程外の事項に類似の規定を当てはめる)、反対解釈(ある規定から逆の結論を導く。「善意者は保護」→悪意者は保護されない)、勿論解釈(明文の規定がなくても趣旨から当然に導く)。類推解釈は、刑法において被告人に不利益な場合に限り、罪刑法定主義(憲法31条・39条)により禁止されます——民事法では広く認められ、刑法でも被告人に有利な類推までは禁止されません。
却下は訴え・申立てが不適法(要件を欠く)で、中身を審理せずに退けることです。棄却は適法だが、審理の結果、主張に理由がないとして退けることです。この区別は行政不服審査・行政訴訟でも共通して使われます。
三審制における上訴の種類も整理します。控訴は第一審判決への不服申立てで、事実問題・法律問題の両方を再審査します。上告は控訴審判決への不服申立てで、原則として法律問題のみを審査する法律審です。決定・命令に対する不服申立ては抗告と呼ばれます。
「類推解釈は一切禁止」という断定語が定番の誤りです
第一の手口は限定語の削除です。「類推解釈は一切禁止される」は誤りです。禁止されるのは刑法で被告人に不利益な場合に限られ、民事法では広く用いられます。
第二の手口は却下・棄却の入れ替えです。「訴えが適法だが理由がないとして退けられることを却下という」は誤りです。それは棄却です。却下は不適法の場合です。
第三の手口は控訴・上告の審査範囲の入れ替えです。「上告審は事実問題・法律問題の両方を審査する」は誤りです。上告は法律問題のみを審査する法律審です。
行政不服申立ての代理業務を行う行政書士にとって、却下と棄却の区別は日常の実務用語です。「この審査請求は却下される見込みです」と伝える場合と「棄却される見込みです」と伝える場合では、依頼者への説明の重心がまったく変わります(前者は形式要件の不備、後者は主張の中身の問題)。この区別を正確に使い分けることが、専門家としての説明責任です。
答えです。拡大解釈は射程内、類推解釈は射程外。却下は入口で不適法、棄却は中身を見て理由なし。控訴は事実も法律も、上告は法律問題のみ。次は、法律そのものがいつ・どこで・誰に効力を持つかを見ます。