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基礎法学 / 基礎法学基礎
基礎法学 1/3 / 約5分

法令用語 — 仮の座席と、ガムテープで固定した座席です

「妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する」(民法772条1項)。「失踪の宣告を受けた者は、死亡したものとみなす」(民法31条)。似た文脈で使われる「推定する」と「みなす」ですが、この2つの言葉の違いを正確に説明できるでしょうか。この一線が、法令用語の中でも最も繰り返し問われる論点です。

この5分の問い

「推定する」と「みなす」は何が違い、法律用語の「善意」はなぜ道徳と無関係なのでしょうか。

直感でつかむ

仮の座席と、ガムテープで固定した座席です

推定するは、いわば仮に座らせた座席です。反証(別の証拠)を示せば、その座席から動かせます。夫の子であるという嫡出推定(772条1項)は、嫡出否認の訴えという反証の手続で覆せます。みなすは、ガムテープで固定した座席です。反証では動かせず、法律が定めた別の手続(取消し等)がない限り、その扱いが確定します。失踪宣告による死亡(31条)は、宣告そのものが取り消されない限り、死亡として確定的に扱われます。

用語の軸推定する=反証で覆せる。みなす=反証不可(別の手続がない限り確定)。
厳密に見る

善意・悪意、緊迫度、並列の助詞まで、体系的に押さえます

「みなす」の用例は多岐にわたります。取り消された行為は初めから無効であったとみなす(121条、遡及的に確定)。住所が知れない場合は居所を住所とみなす(23条1項)。胎児は相続については既に生まれたものとみなす(886条1項、死産なら遡及的に不適用)。相続財産を処分したときは単純承認をしたとみなす(921条1号、法定単純承認)。いずれも反証の余地なく確定的に扱われる点が共通します。

被保佐人・被補助人本人への催告で確答がないときは取り消したとみなす(20条4項)——法定代理人等への催告なら追認とみなす(20条2項)のとになる点が、ひっかけの定番です。

「善意」「悪意」は道徳的な良し悪しとは無関係です。善意=ある事情を知らないこと悪意知っていることを指します。緊迫度を表す言葉には3段階の順序があります。直ちに(即座・猶予なし)>速やかに(できるだけ早く)>遅滞なく(合理的な期間内は許容)。数の表現では、以上・以下は境界値を含み超える・未満は境界値を含みません

並列を表す助詞にも階層があります。同じレベルの並列は「及び」(AND)・「又は」(OR)を使い、大きな並列の中に小さな並列があるときは、小さい方に「並びに」「若しくは」を使い、一番大きな並列に「及び」「又は」を残します。

結論が反転する分かれ目
推定する
反証可能
別の証拠を示せば覆せる(例:嫡出推定・772条1項)
みなす
反証不可
別の手続(取消し等)がない限り確定的に扱う(例:失踪宣告による死亡・31条)
分かれ目 「推定」は覆る。「みなす」は覆らない。法令用語で最頻出の区別。
ここで間違える

説明文の入れ替えと、順序の逆転が定番の誤りです

第一の手口は推定とみなすの説明の入れ替えです。「みなす」の説明として「反証により覆すことができる」という文言が付いていたら誤りです。反証で覆せるのは推定の方です。

第二の手口は善意・悪意の方向の逆転です。「悪意とは、ある事情を知らないことをいう」は誤りです。悪意=知っていることです。

第三の手口は緊迫度の順序の入れ替えです。「遅滞なくは、直ちに・速やかにより緊急性が高い」は誤りです。緊急性は直ちに>速やかに>遅滞なくの順です。

実務では

契約書・許認可申請書類を作成する行政書士にとって、法令用語の正確な理解は業務の基礎体力です。依頼者から「この条文の『みなす』は、あとで覆せますか」と聞かれたとき、即座に正確な回答ができるかどうかは、専門家としての信頼に直結します。日常の書類作成でも、期限を「直ちに」と書くか「遅滞なく」と書くかで、依頼者の実務上の負担がまったく変わります。

確かめる — 予想してから答え合わせ
この5分のまとめ

答えです。推定は反証で覆せ、みなすは覆せません。善意・悪意は「知っているかどうか」だけの中立的な言葉です。次は、この言葉を使って条文をどう読み解くか——法の解釈技法です。