不利益処分と聴聞・弁明 — 重い処分ほど、言い分は口頭で聞きます
営業許可の取消しのような重い処分を受ける人に、処分の前に言い分を述べる機会を保障する。当たり前に見えるこの仕組みが行政全般の共通ルールになったのも、1993年制定の行政手続法からです。
しかも一律ではありません。法律は処分の重さで「言い分の聞き方」を2段階に分けており、どちらに振り分けられるかが毎年のように問われます。重い側(聴聞)になるのは4つの場合です。
不利益処分の前に、行政庁はどんな手続を踏まなければならないのでしょうか。
面談で聞くか、始末書で足りるか
職場の懲罰でも、重大な案件ほど本人を呼んで直接話を聞き、軽微な案件は書面の提出で済ませる、という濃淡があります。行政手続法の枠組みも同じ形です。重い処分の前は出頭して口頭で述べる「聴聞」、それ以外は原則書面の「弁明の機会の付与」です。
もう1つ、この場面の基準(処分基準)は、申請のときの審査基準と扱いが逆になります。ねずみ取りの場所を全部貼り出さないのと同じで、基準すれすれの脱法を防ぐため、設定も公表も努力義務にとどまります。
13条のイ・ロ・ハ・ニが、聴聞になる場合のすべてです
まず基準です。処分基準について条文は「定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない」(12条1項)と、設定・公表をまとめて努力義務にしています。
次に振り分けです。13条1項は、聴聞になる場合を4つ列挙し、それ以外を弁明に落とす構造です。
イ 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。/ロ …名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分…/ハ …役員の解任を命ずる…業務に従事する者の解任を命ずる…会員である者の除名を命ずる…/ニ …行政庁が相当と認めるとき。(行政手続法13条1項1号)
聴聞は口頭の手続で、代理人を選ぶことができ、当事者には資料の閲覧を求める権利が認められます。弁明は原則として弁明書の提出、つまり書面です。なお、公益上緊急に処分する必要があるときなど、意見陳述の手続自体を省ける例外もあります(13条2項)。
申請を拒否された人に、聴聞は要りません
いちばん深い罠はこれです。「許可申請を拒否するときは、聴聞を経なければならない」という肢は誤りです。申請への拒否は、条文の定義上そもそも不利益処分に当たりません(2条4号ロで明文除外)。拒否に必要なのは理由の提示(8条)で、聴聞・弁明の出番は不利益処分だけです。
振り分けの手口も定番です。「30日間の業務停止命令には聴聞が必要」は誤りです。停止は取消しでも剥奪でもないので、弁明で足ります。逆に「医師免許の取消しは弁明で足りる」も誤りです(資格の剥奪=聴聞)。
基準の入れ替えにも注意してください。「処分基準は公にしておかなければならない」は誤りで、努力義務です(12条)。
「取消しの手続が始まると通知が来ました。もう決まったも同然ですか」という相談には、まだ手続の入口だと答えられます。聴聞では代理人を立てられ、許認可に関する聴聞・弁明の代理は行政書士の業務範囲に含まれます(行政書士法1条の4第1項1号)。処分の理由となる事実を資料で確かめ、言い分を組み立てて出頭する。ここは行政書士が依頼者の隣に立てる数少ない「防御」の場面です。
答えです。行政庁は処分の重さに応じて、取消し・剥奪・解任なら聴聞、それ以外なら弁明の機会を与えなければなりません。では、その処分の通知に書かれる「理由」は、どこまで詳しくなければならないのか。次のユニットが記述式の本丸です。