shikakuホームへ
行政法 / 地方自治法地方
地方自治法 5/5 / 約5分

事務の区分と国の関与 — 預かりものの仕事ほど、口出しが強まります

かつての知事や市長は、国の出先機関として国の事務を丸ごと「機関委任」される立場でした。2000年(平成12年)施行の地方分権改革でこの仕組みは廃止され、自治体の仕事は自治事務法定受託事務の2種類に整理されました。国がどこまで口を出せるかは、いまやこの区分で決まります。

この5分の問い

自治事務と法定受託事務では、国の関与の強さがどう違うのでしょうか。

直感でつかむ

自前の仕事と、預かりものの仕事です

自前の仕事(自治事務)には、外からは「直してほしい」と求めるまでが礼儀です。預かりものの仕事(法定受託事務)には、持ち主が「こう直せ」と指図でき、最後は取り上げて自分でやり直すことすらできます。関与の強さの段差は、この所有感覚で覚えられます。

関与の軸自治事務=是正の要求まで。法定受託事務=是正の指示、さらに代執行まで。

そして、どちらの関与にも大前提があります。国の関与は法律またはこれに基づく政令の根拠がなければできません(関与の法定主義)。

厳密に見る

定義は2条、関与の道具は245条台に並んでいます

この法律において「自治事務」とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう。(地方自治法2条8項)

法定受託事務は、国(第1号)または都道府県(第2号)が本来果たすべき役割に係る事務で、その適正な処理を特に確保する必要があるとして法律・政令で特に定めるものです(2条9項)。大切なのは、法定受託事務も地方公共団体自身の事務だという点です。国の事務を代行しているのではありません。

関与の道具立てを比べます。自治事務の処理が法令違反または著しく適正を欠き明らかに公益を害するときは、各大臣は是正の要求ができます(245条の5)。法定受託事務には、より強い是正の指示ができ(245条の7)、指示に従わないときは、勧告・指示・裁判所の手続を経て、大臣が代執行——自治体に代わって自ら処理する——まで進めます(245条の8)。

結論が反転する分かれ目
自治事務
自前の仕事
法定受託事務以外のすべて(2条8項)。国の関与は是正の要求まで(245条の5)
法定受託事務
預かりものの仕事
国・都道府県が本来果たすべき役割に係る事務(2条9項)。是正の指示・代執行まで(245条の7・245条の8)
分かれ目 「指示」「代執行」の語が出たら法定受託事務。ただしどちらも自治体自身の事務。
ここで間違える

「法定受託事務は国の事務」が、いちばん深い誤りです

第一の手口は性質論です。「法定受託事務は国の事務であり、地方公共団体の事務ではない」は誤りです。受託という語感に引きずらせる罠で、法律上は自治体の事務です。

第二の手口は道具の入れ替えです。「自治事務について、各大臣は是正の指示をすることができる」は誤りです。自治事務は是正の要求まで、指示と代執行は法定受託事務の道具です。

第三の手口は歴史です。「機関委任事務として処理される事務がある」という現在形の肢は誤りです。機関委任事務は2000年施行の改革で廃止されました。

最後に前提です。「国は、法律の根拠がなくても自治体に関与できる」は誤りです(関与の法定主義)。

実務では

同じ市役所の窓口でも、事務の出自はさまざまです。旅券(パスポート)の発給事務は法定受託事務の代表例で、図書館や公園の運営は自治事務です。許認可の相談で根拠法令を辿るとき、その事務がどちらの区分かを見ると、国の通知・処理基準がどの重みで効いているかの見当がつきます。条例で独自の上乗せがありうるのは、主として自治事務の側です。

確かめる — 予想してから答え合わせ
この5分のまとめ

答えです。自治事務には是正の要求まで、法定受託事務には是正の指示から代執行まで、そしてどの関与にも法律の根拠が要ります。これで地方自治法の5ユニット、そして行政法の主要分野のユニット化が一巡しました。ドリルで数字の反射を作って、次の科目へ進んでください。