議会と長 — 不信任への返し技は、解散か失職の二択です
自治体では、議会の議員も長も、どちらも住民が直接選びます(二元代表制。国の議院内閣制とはここが違います)。対等な二者が向き合うので、法律は互いへの武器を持たせました。議会には不信任議決、長には解散と専決処分です。数字と手順が国の制度と微妙に違い、そこが出題の的になります。
不信任を突きつけられた長には何ができて、議会を通さない処分はどこまで許されるのでしょうか。
相打ち覚悟の伝家の宝刀です
不信任と解散は、労使の最終交渉に似た相打ちの構造です。議会が不信任を議決すると、長は10日以内に「議会を解散して信を問う」か「自ら職を失う」かの二択を迫られます。解散で応戦しても、新しい議会が再び不信任を出せば、今度は逃げ場がありません。
もう1つの武器が、議会を通さずに長が決める専決処分です。こちらは「本当に議会を待てなかったのか」が問われます。
178条の攻防は、数字が段階的に緩くなります
不信任議決には、議員数の3分の2以上が出席し、その4分の3以上の同意が必要です(178条3項)。議決があると議長から長に通知され、長は通知を受けた日から10日以内に議会を解散できます(1項)。解散しなければ、期間が経過した日に失職します(2項)。解散した場合でも、選挙後に初めて招集された議会で再び不信任が議決されると(今度は出席議員の過半数の同意で足ります)、長は通知の日に失職します(2項・3項)。
専決処分(179条)は、議会が成立しないとき、緊急で議会を招集する時間的余裕がないことが明らかなとき、議会が議決すべき事件を議決しないときなどに、長が議決すべき事件を自ら処分する制度です。長は次の会議で報告し、承認を求めなければなりません。承認が否決されても処分の効力は失われませんが、条例・予算に関する処置が不承認となったときは、長は必要な措置を講じて議会に報告する義務を負います(4項)。
これと別に、議会の議決で指定された軽易な事項を長が処分する委任による専決処分(180条)があり、こちらは議会への報告だけで足ります。
「再不信任も4分の3」と「不承認なら無効」が二大手口です
第一の手口は数字の据え置きです。「再度の不信任議決にも、出席議員の4分の3以上の同意が必要」は誤りです。再不信任は過半数で足ります。初回だけが重いのです。
第二の手口は効力です。「専決処分が議会で承認されなかったときは、当該処分は効力を失う」は誤りです。不承認でも効力は維持され、長の政治責任の問題になります。
第三の手口は179条と180条の混同です。法定の専決処分(179条)は承認を求める義務があり、委任による専決処分(180条)は報告のみ。「どちらも承認が必要」も「どちらも報告のみ」も誤りです。
補助金の交付決定や指定管理者の指定のように、依頼者の案件が議会の議決を要することがあります。議会の会期と提案のタイミングを読み違えると、事業のスケジュールが数か月単位でずれます。専決処分は例外中の例外なので、「議会を待たずに何とかならないか」という期待には、この制度の狭さを正確に伝えるのが誠実な助言です。
答えです。不信任を受けた長の返し技は10日以内の解散、それをしなければ失職。専決処分は限られた場面の例外で、不承認でも効力は残ります。最後のユニットでは、自治体と国の距離の測り方を見ます。