この章は3つの論点ユニット(Wave 9)に生まれ変わりました。短く区切って学べて、ドリル・索引とつながっています。 新しい「民法・物権① 対抗問題」をはじめる →
この旧版は当面そのまま読めます。
売った、また売った——同じ不動産に複数の権利が絡まったとき、誰がその物を主張できるかを決めるのが177条の対抗問題。動産取引を守る即時取得とあわせて、「誰のモノか」の入口を体得する章。担保物権・用益物権・共有は続きの章で扱う。
AがBに土地を売り、同じ土地をCにも売った。先に登記を備えたのはC。BはCに土地の所有権を主張できるか? 動産を無権利者から買ってしまったとき、買主は保護されるか?
行政書士は不動産登記手続・農地転用許可・建設業許可など、不動産に関連する手続きを数多く扱う。「この不動産の所有者は誰か」「登記なくして主張できるか」は、依頼者から最も頻繁に聞かれる問いである。177条の対抗問題は、二重売買・時効取得・解除後の第三者といった日常的な不動産取引上の紛争を解決する核心ルール。即時取得は動産取引の安全のための制度で、遺産分割や贈与手続の場面でも問題になる。
物権とは、物を直接・排他的に支配する権利。債権(特定人に対する請求権)と対比される。民法は物権法定主義(175条)を採り、法律に定めのない物権を創設できない。
他人の行為を介さず、物を直接支配できる。
同一物に同一内容の物権は一つしか成立しない(一物一権主義)。
すべての人に対して主張できる(対世的効力)。
物権を侵害されたとき、返還・妨害排除・妨害予防の請求ができる。
民法176条は「物権の設定・移転は当事者の意思表示のみによってその効力を生ずる」と定める(意思主義)。AとBが口頭で売買合意しただけで、Bは所有権を取得できる。
しかし177条は「不動産の物権変動は登記がなければ第三者に対抗できない」と定める。AがBに売った後でCにも売った場合(二重譲渡)、BとCのどちらが所有権を主張できるかは先に登記を備えた方が決する。
民法177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
177条の「第三者」は正当な利益を有する者に限られる(判例)。背信的悪意者(登記の欠缺を主張することが信義則に反する者)は除外され、登記なくして対抗できる(最判昭43.8.2)。
177条の第三者=登記がなければ対抗不可の「第三者」=正当な利益を有する者(背信的悪意者は除外)。94条2項の第三者=虚偽表示の無効を対抗不可の「第三者」=善意(無過失不要)の者。177条は「登記の先後」で決する(善意悪意は原則不問)のに対し、94条2項は「善意」で保護される——問われている条文が違えば、勝敗を決める物差しも違う。
二重譲渡→ 登記の先後で決する。取消後の第三者→ 177条の対抗問題(登記必要)。解除後の第三者→ 177条の対抗問題(登記必要)。時効完成後の第三者→ 177条の対抗問題(登記必要)。一方、取消前の第三者は96条3項で善意無過失なら保護(登記必要説)。時効完成前の第三者には時効取得者が登記なく当然対抗可。相続放棄は登記不要(物権変動ではない)。
動産は登記がない。代わりに占有が公示手段となり、占有への信頼を保護するのが即時取得(192条)。
学習優先度:高|即時取得は物権分野の中核論点で、民法全体でも出題比重が高い(yobi-minpo-resources.md調べ)。占有改定との関係まで詰めて確実に取りに行く。
すべて満たして初めて原始取得。一つでも欠ければ成立しない。
| 要件 | ポイント |
|---|---|
| ①動産 | 不動産は対象外。登記で公示される不動産には適用なし |
| ②取引行為 | 売買・贈与・質入れ等。相続・時効取得には適用なし |
| ③善意無過失 | 占有者が真の所有者だと信じ、かつ信じることに無過失 |
| ④平穏・公然 | 占有が暴力・隠秘によらない |
| ⑤占有取得 | 現実の引渡し・簡易の引渡し・指図による占有移転では成立するが、占有改定では成立しない(最判昭35.2.11) |
即時取得が成立する場合でも、被害者・遺失者は2年以内に盗品・遺失物の回復を請求できる(193条)。ただし競売・公の市場・同種の物を販売する商人から善意購入者が買った場合は代価の弁償が必要(194条)。
事案を読み、登記が必要か・不要かを判定する。176条・177条の適用場面を自分の手で仕分けることで判断軸が定着する。
事案を読み、登記が対抗要件として必要かを判定する。
「引渡しを受けた」と書いておいて、それが占有改定の場合→ 誤り。即時取得は現実の引渡し・簡易の引渡し・指図による占有移転の場合のみ成立(最判昭35.2.11)。
「177条の第三者は善意・悪意を問わない」→ 原則は正しいが例外がある。背信的悪意者は第三者から除外(最判昭43.8.2)。登記なくして対抗可能。
「時効が完成した後は常に登記なくして対抗できる」→ 誤り。時効完成前の第三者には登記不要で当然対抗可。しかし時効完成後に現れた第三者には177条の対抗問題となり登記が必要。
「詐欺による売買が取り消された後にその不動産を買い受けた第三者は、取消しの事実を知らなければ登記がなくても保護される」→ 誤り。取消し後・解除後に登場した第三者は177条の対抗問題となり、登記の先後で決する(取消後=大判昭17.9.30、解除後=545条1項ただし書は「解除前」の第三者の規定で、解除後は177条)。取消し「前」(詐欺は96条3項・善意無過失で保護)・解除「前」(545条1項ただし書)とは処理が切り替わる。
動産の売買において、買主Bが売主Aから占有改定の方法によって動産の引渡しを受けた場合、Bに即時取得(民法192条)は成立するか。
民法における不動産物権変動に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
民法192条の即時取得に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
不動産物権変動は意思主義(176条)で動くが第三者対抗は登記が必要(177条)。背信的悪意者は除外。取消・解除の前は各条文の第三者保護規定、後は177条。動産の即時取得は占有改定では成立しない。担保物権・用益物権・共有は次の章へ。
177条の「第三者」から〔 ? 〕は除外される。即時取得が成立しない引渡しの形態は〔 ? 〕。取消・解除の〔 ? 〕に現れた第三者は177条の対抗問題(登記勝負)になる。
先取特権・留置権・地上権・地役権・共有・抵当権・法定地上権・物上代位を扱う。