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企業経営理論 / 競争優位と革新競争
競争優位と革新 4/5 / 約5分

ケイパビリティ — 強みには「いまの正体」と「作り替える力」があります

腕のいいシェフの店が潰れることがあります。料理の腕——いまの強み——は本物なのに、客の好みが変わったときメニューを作り替える力がなかった。一方、繁盛し続ける店には、ベテラン板前の「目分量」を若手に伝えて店全体の知恵にする仕組みがあります。

いまの強みの正体、強みを作り替える力、個人の勘を組織の財産にする循環——3つの「能力」の理論を、提唱者ごと区別するのがこのユニットです。

この5分の問い

企業の「強み」は何が条件で成立し、環境変化にどう対応し、どうすれば組織の財産になるのでしょうか。

直感でつかむ

いまの強み・作り替える力・知恵にする循環——3つを区別します

第一にコアコンピタンス(プラハラード&ハメル)——競合が真似できない核心的な能力、つまり「いまの強みの正体」です。第二にダイナミック・ケイパビリティ(ティースら)——環境変化に合わせて、資源や能力そのものを組み替える力。シェフの腕が前者なら、メニューを変える力が後者です。

第三にSECIモデル(野中・竹内)——板前の目分量のような暗黙知を組織の形式知に変換し、また血肉に戻す知識創造の循環です。「強みの正体・作り替え・蓄積」の3点セットで持ってください。

ケイパビリティの合言葉いまの強み=コアコンピタンス/作り替える力=ダイナミック・ケイパビリティ/知恵の循環=SECI
厳密に見る

3条件・3プロセス・4モード——それぞれの中身まで固めます

コアコンピタンスの3条件=顧客価値を生む・競合に模倣されにくい・多様な市場へ展開できる。裏返しがコアリジディティ(レナード=バートン)——過去の強みへの執着が変化の足かせになる逆説です。

ダイナミック・ケイパビリティの3プロセス(ティース)=センシング(機会と脅威の感知)・シージング(機会の捕捉と資源動員)・リコンフィギュリング(資源の再構成)。日常業務を効率よく回すオーディナリー・ケイパビリティとの対比で問われます。SECIの4モード共同化(暗黙知→暗黙知)・表出化(暗黙知→形式知)・連結化(形式知→形式知)・内面化(形式知→暗黙知)——一巡して終わりではなく、スパイラルに回り続けます。

結論が反転する分かれ目
コアコンピタンス
いまの強みの正体
顧客価値・模倣困難・展開力の3条件。執着すればコアリジディティに
ダイナミック・ケイパビリティ
強みを作り替える力
センシング・シージング・リコンフィギュリングの3プロセス
分かれ目 「既存の強み」か「強みを変える力」か。定義文の述語(〜という能力)だけ読んで即断せず、どちら側かを判定します。
ここで間違える

「いまの強み」と「作り替える力」のすり替え、SECI一方通行が定番です

最頻出はコアコンピタンスとダイナミック・ケイパビリティのすり替え——「環境変化に応じて資源を再構成する能力をコアコンピタンスという」は誤り、それはダイナミック・ケイパビリティです。既存の強みか、強みを変える力か、で切り分けてください。

SECIでは「S→E→C→Iの一方向で完結する」が誤り肢——スパイラルに循環し続けるのが本質です。4モードの変換の向き(表出化=暗黙知から形式知)の入れ替えにも注意。

実務では

事業承継の診断は、ケイパビリティ論の実地演習です。先代の強みは何だったのか(コアコンピタンス)、それは時代に合わせて組み替えられるか(ダイナミック・ケイパビリティ)、そして先代の頭の中の勘をどう文書と教育に落とすか(SECIの表出化)——「技術はあるが継げない」という会社の課題は、たいていこの3層のどこかにあります。

確かめる — 予想してから答え合わせ
この5分のまとめ

冒頭の問いに答えます。強みは顧客価値・模倣困難・展開力の3条件で成立し(コアコンピタンス)、センシング→シージング→リコンフィギュリングで作り替えられ(ダイナミック・ケイパビリティ)、SECIのスパイラルで組織の財産になります。では、その強みの土俵ごとひっくり返す波——イノベーションの理論へ進みます。