直接請求 — 頼み事は1/50、クビは1/3です
住民には、選挙のほかにも自治体を直接動かすボタンが用意されています。条例を作らせる、事務を監査させる、議会を解散させる、長を辞めさせる。ボタンごとに、必要な署名の数と、押し込む窓口が法律で決まっています。試験が聞いてくるのは、ほぼこの組合せだけです。覚える行は4つで足ります。
直接請求は、それぞれ何分の一の署名を集めて、誰に出すのでしょうか。
軽い頼み事は50人に1人、クビを取るなら3人に1人です
数字の側は、頼み事の重さで割り切れます。ルールを作ってほしい・調べてほしいという「お願い」は有権者の50分の1。議会や長を辞めさせるという「クビ」の話は3分の1です。
請求先の側も、丸暗記ではなく機能で覚えられます。条例は議会に諮る必要があるので窓口は長、監査は監査の専門機関へ、解散・解職はその後に住民投票が控えるので、投票を仕切る選挙管理委員会へ、という理屈です。
74条から86条まで、4行の表に畳めます
条文で確定させます。条例の制定・改廃は1/50以上の連署で長へ(74条1項)。長は受理した日から20日以内に議会を招集し、意見を付けて付議します(同3項)。ただし1項の括弧書きに注意です。地方税の賦課徴収、分担金・使用料・手数料の徴収に関する条例は、対象から除かれています。
事務の監査は1/50以上で監査委員へ(75条1項)。議会の解散は1/3以上で選挙管理委員会へ請求し、住民投票で過半数の同意があれば解散します(76条・78条)。議員・長の解職も1/3以上で選挙管理委員会へ、住民投票で決まります(80条・81条)。
変わり種が副知事・副市町村長などの主要公務員の解職です。署名は1/3以上ですが、住民投票ではなく、長に請求して議会に付議する形をとります(86条)。なお、1/3という数字には、有権者総数が40万を超える大都市について負担を緩和する換算の括弧書きが付いています(76条1項等)。
数字の逆転、請求先のすり替え、対象外の条例——手口は3系統です
第一は数字です。「条例の制定改廃請求は有権者の3分の1以上の連署による」は誤りです。1/50と1/3の入れ替えが最頻出です。
第二は請求先です。「長の解職請求は議会に対して行う」は誤りで、選挙管理委員会です。解職請求のうち長に対して行うのは、主要公務員の解職(86条)だけです。
第三は対象です。「地方税に関する条例の制定改廃も直接請求できる」は誤りです(74条1項括弧書き)。税金を下げる請求が乱発されることを防ぐ趣旨です。
最後にもう1つ。「解散請求が成立すれば直ちに議会は解散する」は誤りです。選挙管理委員会への請求の後、住民投票の過半数という関門が残っています。
「署名を集めて条例を作らせたい」という相談は、市民活動の現場から実際に来ます。権利義務に関する書類作成のプロとして、署名簿の様式・代表者の資格・請求書類の整備を支援できるのが行政書士です。1/50の署名が集まっても対象外の条例では受理されないので、入口で74条の但書を確認するところから設計します。
答えは4行です。条例1/50→長、監査1/50→監査委員、解散・解職1/3→選挙管理委員会、主要公務員の解職1/3→長。次のユニットは、署名を1筆も集めずに、住民1人で始められる制度です。