この章は5つの論点ユニット(Wave 9)に生まれ変わりました。短く区切って学べて、ドリル・索引とつながっています。 新しい「民法・総則」をはじめる →
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意思表示に欠陥があったとき、法律行為はどうなるのか。無効か取消しか、第三者を守るかどうか——この分岐が毎年の出題の生命線。意思表示・代理・時効を一気に整理する章。
AとBが通謀して売買契約を偽装した。善意のCがBから土地を買った。Aは「無効だ」と言ってCに土地を返せと主張できるか? 詐欺の場合と、強迫の場合で答えが変わるのはなぜか? 代理人が自分の利益のために取引したとき、本人は責任を負うのか?
行政書士は法律文書の作成・相談業務を担う国家資格。意思表示の瑕疵(錯誤・詐欺・強迫)と代理の法理は、依頼者との契約が有効かどうかを判断する上での根幹。「この契約は取り消せるか」「代理人が権限を超えて締結した契約の効力は」という問いは、売買契約書・贈与契約書・委任状の作成業務で日常的に直面する。また、消滅時効の二重基準(166条)は、遺言書・相続案件で権利行使期限を依頼者に説明する場面で不可欠。民法総則が「法律行為の共通ルール」として全科目の基礎をなすことが、行政書士試験で毎年必出とされる理由である。
民法総則は「誰でも・どんな場面でも適用される共通ルール」。行政書士試験では意思表示・代理・時効の3つが最頻出。
| テーマ | 中心論点 | 条文 | 頻出度 |
|---|---|---|---|
| 意思表示の瑕疵 | 無効 vs 取消し・第三者保護要件 | 93〜96条 | ★★★ |
| 代理 | 表見代理3類型・無権代理と相続 | 99〜118条 | ★★★ |
| 時効 | 消滅時効の二重基準・完成猶予と更新 | 145〜166条 | ★★★ |
2017年(平成29年)の民法改正で、錯誤の効果が「無効」から「取消し」に変更(95条)。また詐欺の第三者保護要件が「善意」から「善意無過失」に強化(96条3項)。改正前後の比較が頻出。
| 類型 | 条文 | 効果 | 第三者保護 |
|---|---|---|---|
| 心裡留保 | 93条 | 原則有効 相手方が悪意・有過失→無効 | 善意のみで保護(93条2項) 過失の有無は問わない |
| 虚偽表示 (通謀) | 94条 | 当事者間では無効 | 善意のみで保護(94条2項) 無過失不要。94条2項類推適用も重要 |
| 錯誤 | 95条 | 取消し (2017年改正で無効→取消しに変更) | 善意無過失の第三者に対抗不可(95条4項) |
| 詐欺 | 96条 | 取消し | 善意無過失の第三者に対抗不可(96条3項) (2017年改正で「善意」→「善意無過失」に強化) |
| 強迫 | 96条 | 取消し | 保護規定なし 被害者(表意者)を最優先保護。善意の第三者も保護されない |
錯誤には2種類ある。①表示錯誤(95条1項1号)は「意思表示の内容の錯誤」。②動機の錯誤(95条1項2号)は2017年改正で明文化された「表意者が法律行為の基礎とした事情の錯誤」。動機の錯誤は、その動機が相手方に表示されていた場合に限り取消しが認められる。
表意者自身に重大な過失がある場合、原則として錯誤取消しはできない。ただし例外として、①相手方が錯誤について悪意・重過失がある場合、②相手方も同一の錯誤に陥っている場合(共通錯誤)は、取消しが認められる。
詐欺には「当事者詐欺」と「第三者詐欺」の2パターンがある。相手方以外の第三者が詐欺を行った場合(96条2項)、相手方が悪意または有過失のときに限り取消しができる。相手方が善意無過失であれば取消し不可。
当事者詐欺(96条1項):契約の相手方が詐欺をした → 常に取消し可能。
第三者詐欺(96条2項):第三者Cが詐欺をして、Aが相手方Bと契約した → 相手方Bが悪意・有過失のときのみ取消し可。相手方が善意無過失なら取消しできない。
さらに96条3項により、取消し前に出現した善意無過失の第三者Dには対抗不可。
不動産の登記を他人に勝手にされた場合でも、外形作出に帰責性があれば、94条2項を類推適用して善意の第三者を保護する。これは「権利外観法理」の表れ。
成年年齢は18歳(4条。2018年改正・2022年4月1日施行)。行為能力が制限される4類型は次のとおり。
| 類型 | 条文 | 保護者 | 取消権者 |
|---|---|---|---|
| 未成年者 | 5条 | 親権者・後見人 | 本人・法定代理人 |
| 成年被後見人 | 7条〜 | 成年後見人 | 本人・後見人 |
| 被保佐人 | 11条〜 | 保佐人 | 本人・保佐人 |
| 被補助人 | 15条〜 | 補助人 | 本人・補助人 |
相手方の催告権(20条):1か月以上の期間を定めて追認するか否かを催告。確答がなければ追認とみなす。詐術(21条):制限行為能力者が行為能力者であると信じさせるための術策を用いた場合は取消し不可。
学習優先度:高|制限行為能力は総則の基本かつ頻出の得点源(yobi-minpo-resources.md調べ)。落とすと致命傷、確実に取りに行く。
学習優先度:中〜高|代理・表見代理は総則で繰り返し問われる論点(yobi-minpo-resources.md調べ)。表見代理3類型・無権代理の処理を詰めれば取れる。
| 類型 | 条文 | 要件(相手方側) |
|---|---|---|
| 代理権授与の表示 | 109条 | 善意無過失(表示を信頼) |
| 権限外の行為 | 110条 | 善意無過失(権限内と信ずるに正当理由) |
| 代理権消滅後 | 112条 | 善意無過失(消滅を知らず) |
代理権授与の表示(109条)があり、かつその表示された権限を超えた行為をした場合、109条と110条を重畳適用できる。相手方は善意無過失であれば保護される。
代理権は存在するが、代理人が自己または第三者の利益を図る目的で代理権を行使した場合(代理権濫用)、相手方がその目的について悪意または有過失であれば、無権代理とみなされる(107条。2017年改正で明文化)。
同一当事者が双方の代理人となること(双方代理)や、代理人が相手方として取引すること(自己契約)は原則無権代理とみなす。2017年改正で利益相反行為一般も明文化された。ただし、本人があらかじめ許諾した場合は例外。
代理人が、自己の名で選任した代理人を復代理人という。任意代理人(本人の意思で選任された代理人)と法定代理人(法律上当然に代理権が生じる代理人)では、復代理人を選任できる要件が異なる。
任意代理人は、①本人の許諾がある場合、または②やむを得ない事由がある場合に限り、復代理人を選任できる。それ以外の場合は選任できない。復代理人の行為は直接本人に効果が帰属する。
法定代理人は、自己の責任においていつでも復代理人を選任できる(制限なし)。法定代理人には行為の自由が広く認められる一方、復代理人の行為について責任を負う。ただしやむを得ない事由によって選任したときは、監督責任のみを負う。
無権代理の場合、本人が追認しない限り、相手方に対して効力を生じない。無権代理人は相手方が善意無過失であれば、①履行または②損害賠償の責任を負う(117条)。
無権代理人Bが本人Aを単独相続した場合、Bは追認を拒絶できない。当然に有効となる。信義則上、自ら無権代理をしたBが追認を拒絶することは許されない。
本人Aが追認を拒絶した後に死亡し、Bが相続した場合、Bは追認拒絶の効果を承継する。有効にはならない。
取消しができるのは取消権者だけ。120条は取消権者を限定列挙している。
相手方や第三者は取消権を持たない。取消しは取消権者の意思表示によって行う(123条)。
取り消された行為は、はじめから無効であったものとみなされる(121条)。これを遡及効という。契約締結時点にさかのぼって無効となるため、すでに給付が行われていた場合は原状回復義務が生じる。
無効または取り消された行為に基づいて給付が行われた場合、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負う(121条の2第1項)。
意思能力を有しなかった者は現に利益を受けている限度で返還すれば足りる(121条の2第3項前段)。制限行為能力者も同様に現存利益の返還で足りる(同項後段)。
取消権を有することを知りながら一定の行為をした場合、追認したものとみなされる(法定追認)。法定追認が成立すると、もはや取消しはできない。
| 行為 | 例 |
|---|---|
| 全部または一部の履行 | 代金を支払った・物を引き渡した |
| 履行の請求 | 相手方に代金の支払いを請求した |
| 更改 | 債務を新しい債務に置き換えた |
| 担保の供与 | 相手方のために抵当権を設定した |
| 取り消せる行為によって取得した権利の譲渡 | 取得した物を第三者に売った |
| 強制執行 | 相手方の財産を差し押さえた |
取消権は時効と類似した期間制限に服する。二重基準になっている点が消滅時効と混同されやすい。
消滅時効は「知った時から5年 / 行使できる時から10年」。取消権は「追認できる時から5年 / 行為から20年」。5年は共通だが、後半の「10年 vs 20年」の差が出題ポイント。取消権の20年の方が長い。
事案を読み、第三者が保護されるための要件を判定する。善意のみか、善意無過失が必要か、保護規定なしか——3択で答える。
事案を読んで、第三者が保護されるための要件を3択から選ぶ。
取消し vs 無効、善意 vs 善意無過失、代理権濫用 vs 無権代理、消滅時効の二重基準——似ているのに結論が違う4ペアで分かれ目を体得する。
2017年改正で時効期間が整理された。
いずれか早い方の経過で時効完成。「知った時から10年」という旧法の規定は廃止されている点に注意。
旧法の「中断」と「停止」は、2017年改正で完成猶予と更新に整理された。
| 事由 | 条文 | 効果 |
|---|---|---|
| 裁判上の請求 | 147条 | 完成猶予 → 確定判決で更新 |
| 催告 | 150条 | 6か月の完成猶予(更新なし) |
| 承認 | 152条 | その時点で更新 |
| 協議合意 | 151条 | 2017年新設。合意した期間完成猶予 |
時効の完成を主張できる「当事者」には、債務者本人のほか、保証人・物上保証人・第三取得者なども含まれる(145条)。
条件とは、将来の不確実な事実の成否に法律行為の効力を係らせる特約。
条件が成就するまで法律行為の効力が発生しない。「Aが試験に合格したら車を贈与する」——合格するまで贈与の効力は停止している。条件成就で初めて効力が発生する。
法律行為は成立時からすでに有効で、条件が成就したときに効力が消滅する。「Aが留年したら奨学金を止める」——成立時から有効、留年が判明したら消滅する。
不能条件:成就しえない停止条件→行為全体が無効(133条1項)。成就しえない解除条件→条件なしとして有効(133条2項)。不法条件:公序良俗に反する条件を付けた行為は無効(134条)。
期限の利益とは、「○月○日まで返さなくていい」という時間的猶予の利益のこと。136条は「期限の利益は、これを放棄することができる」と定める。ただし放棄は相手方の利益を害しない限りでのみ可能。
期限の利益は債務者のためにあるものと推定される(136条1項)。つまり債務者は弁済期前に早く返せるが、債権者は弁済期前の請求はできない。
以下の事由が生じると、債務者は期限の利益を主張できず、直ちに弁済しなければならない。
金銭消費貸借契約書には通常「期限の利益喪失条項」が入っている。137条は法定の喪失事由だが、当事者間で合意による喪失条項を加えることも可能。試験では137条の3号の要件番号より事由の内容が出題される。
「錯誤による意思表示は無効となる」→ 誤り。2017年改正で取消しに変更(95条)。
「詐欺の第三者保護は善意であれば足りる」→ 誤り。2017年改正で「善意無過失」に強化(96条3項)。
「強迫の場合も、善意の第三者は保護される」→ 誤り。強迫には第三者保護規定が存在しない(96条参照)。
「債権の消滅時効は知った時から10年」→ 誤り。知った時から5年、行使できる時から10年の二重基準(166条)。
「無権代理人が本人を相続した場合、追認を拒絶できる」→ 誤り。信義則上、追認拒絶は許されない。当然に有効(最判平5.1.21)。
「代理権はあるが目的外行使」は表見代理ではなく代理権濫用(107条)。相手方が悪意・有過失なら無権代理とみなされる。
錯誤による取消しについて、2017年改正前はどのような効果が定められていたか。
表意者に重大な過失があった場合、錯誤による取消しは認められるか。
無権代理人BがAを相続した場合(Bが唯一の相続人)、無権代理行為の効力はどうなるか。
民法における意思表示の瑕疵に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
民法における代理に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
錯誤・詐欺・強迫は取消し(虚偽表示は無効)。第三者詐欺は相手方が悪意・有過失のときのみ取消し可。第三者保護は虚偽表示=善意のみ、錯誤・詐欺=善意無過失、強迫=保護なし。取消権の期間制限は追認できる時から5年・行為から20年。任意代理の復代理人選任は許諾orやむを得ない事由が必要。消滅時効は知った時から5年・行使できる時から10年。停止条件は成就まで効力停止、解除条件は成就で効力消滅。無権代理人が本人相続→当然有効。
虚偽表示の第三者保護は〔 ? 〕のみで足りる。詐欺・錯誤は〔 ? 〕が必要。強迫には第三者保護が〔 ? 〕。消滅時効は知った時から〔 ? 〕年、行使できる時から〔 ? 〕年。
表見代理3類型のうち、代理権が「最初からない」→〔 ? 〕。代理権が「あったが消えた」→〔 ? 〕(112条)。無権代理人が本人を相続→当然〔 ? 〕(最判平5.1.21)。取消権の期間制限は〔 ? 〕から5年・行為から〔 ? 〕年。