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この章は9つの論点ユニット(Wave 7〜8)に生まれ変わりました。短く区切って学べて、ドリル・索引とつながっています。 新しい「民法・債権」をはじめる →

この旧版は当面そのまま読めます。

行政書士 / 民法 ・ 債権債権
民法の柱 ③

民法・債権 — 約束の「守り方」と「壊し方」

誰かと交わした約束が破られたとき、法律はどう動くか。債務不履行・解除・連帯債務・債権譲渡・不法行為——2017年(平成29年)改正の核心を、2026-04-01基準で体得する章。

法令基準日:2026-04-01 現在施行の法令(令和8年度想定) / 頻出度:A(毎年3-5問) / 主たる根拠:民法415条〜548条・709条〜724条

この章の問い

売主が引き渡しを遅らせた。損害賠償を請求できるか? 契約を解除できるか? 解除に「売主の過失」は必要か? 連帯債務者の一人に請求したら、他の債務者にも効力が及ぶか?

なぜ行政書士試験で問われるのか

行政書士は契約書の作成・確認、債権回収手続への関与、損害賠償請求に関する相談など、債権法が直結する業務を担う。「解除できるか」「損害賠償を請求できるか」「連帯保証はどこまで有効か」——これらは依頼者から最も頻繁に問われる問いである。2017年(平成29年)民法改正で、解除の帰責事由が削除され(541条)、連帯債務の絶対的効力事由が縮減され(432条〜)、危険負担が改訂され(536条)、個人根保証の極度額が義務化された(465条の2)。これらの改正点は行政書士試験で毎年出題されており、「改正前と何が変わったか」を軸に理解することが合格への近道である。

全体像

2017年改正で何が変わったか

民法(債権関係)改正(2020年4月1日施行)は、120年ぶりの大改正。試験で問われる核心は4点

1解除の帰責事由

改正前は解除に債務者の帰責事由が必要だった。改正後は不要に。

2連帯債務の絶対効縮減

「請求」「免除」「時効」は相対的効力に変更(改正前は絶対的効力)。

3債権譲渡制限特約

特約があっても債権譲渡は有効に(改正前は無効)。

4危険負担

534条(債権者主義)が削除。履行拒絶権構成(536条)へ。

学習優先度:|消費貸借など個別契約の細目は出題頻度が低め(yobi-minpo-resources.md調べ)。深追いせず見切り、上記4つの改正の核心に時間を集中する。

序の2
触ってわかる 0

帰責事由:必要か不要か — 即答トレーナー

解除・損害賠償・代金減額・追完・危険負担・求償——場面によって帰責事由が必要か不要かが変わる。8問で判定力を鍛える。

予想 → 答え合わせ

帰責事由は必要か? 不要か?

場面を読んで、帰責事由の要否を2択で判定する。

1 / 8
危険負担(536条)で、債権者が反対給付の履行を拒絶するとき、債務者の帰責事由は必要か。
帰責事由は必要か? 不要か?
厳密に見る

債務不履行と損害賠償(415条〜416条)

直感でつかむ約束を守れなかった → 3類型。賠償範囲は通常損害+予見可能な特別損害

3類型と帰責事由

①履行遅滞

履行期を過ぎても債務を履行しないこと。履行が可能であることが前提。

②履行不能

債務の履行が不可能になったこと。既に起きた不履行。

③不完全履行

履行はされたが、内容が不完全。2017年改正で「契約不適合責任」と一本化。

民法415条1項但書:「債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」
損害賠償の範囲(416条)

通常損害(通常生じるべき損害)は当然に賠償対象。特別損害は「当事者が予見すべきであった事情から生じた損害」に限られる(予見可能性基準)。

2017年改正の核心

解除(541条〜542条)— 帰責事由は不要

最重要ポイント解除に債務者の帰責事由は不要。ただし不履行が「軽微」なら解除不可(541条但書)。

催告解除(541条)

相当の期間を定めて催告し、その期間内に履行がなければ解除できる。
ただし、催告期間経過時の不履行が「軽微」な場合は解除不可(541条但書・2017年新設)。

無催告解除(542条)

履行不能・全部給付拒絶・定期行為・履行の見込みがない場合は催告不要で即解除可能。

危険負担の改正(536条)

改正前534条(債権者主義:目的物が滅失しても債権者は代金を払う義務あり)は削除された。改正後は、債務者の責めに帰することができない事由で履行不能になった場合、債権者は履行を拒絶できる(536条1項)。

解除の効果(545条)— 第三者保護

解除により当事者は原状回復義務を負う(545条1項本文)。ただし、解除前に権利を取得した第三者の権利を害することはできない(545条1項但書)。第三者保護は登記が対抗要件。

厳密に見る

連帯債務の効力 — 絶対か相対か(432条〜440条)

2017年改正で絶対的効力事由が大幅に縮減された。「請求」「免除」「時効」は相対的効力に変更。絶対的効力事由は4つだけになった。

学習優先度:|連帯債務は債権総論に属し、民法で最も出題比重の高い領域(yobi-minpo-resources.md調べ)。絶対効/相対効の区別を固めて取りに行く

絶対的効力 vs 相対的効力

事由改正前改正後(2017年)
弁済・代物弁済・供託絶対的効力絶対的効力(他の者も債務消滅)
相殺絶対的効力絶対的効力(相殺権者の負担部分に限り他の者も債務消滅)
更改絶対的効力絶対的効力
混同絶対的効力絶対的効力
請求絶対的効力相対的効力(改正で変更)
免除絶対的効力相対的効力(改正で変更)
時効の完成絶対的効力相対的効力(改正で変更)
求償権(442条〜)

連帯債務者の一人が自己の負担部分を超えて弁済したとき、他の連帯債務者に求償できる(442条1項)。求償できる範囲は「自己の負担部分を超えた額」。求償権を確保するため、弁済前後に他の連帯債務者に通知する義務がある(443条)。

触ってわかる ②

改正前後・制度間の「分かれ目」

解除 vs 損害賠償、催告解除 vs 無催告解除、連帯保証 vs 連帯債務、使用者責任 vs 注文者責任——似ているのに結論が違う4ペアで分かれ目を体得する。

スイッチで切り替え

混同ペア弁別スイッチ

不要
解除の帰責事由(541条・542条)
2017年改正で帰責事由は解除の要件から削除。天災・不可抗力でも契約を解除できる。ただし軽微な不履行は解除不可(541条但書)
必要
損害賠償の帰責事由(415条)
「債務者の責めに帰することができない事由」があれば免責。不可抗力の場合は損賠請求できない(415条1項但書)
分かれ目 解除は「契約からの離脱」→帰責不要。損賠は「損害の転嫁」→帰責必要。この非対称が2017年改正の核心。
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債権譲渡・不法行為の要点

債権譲渡(466条〜467条)2017年改正

学習優先度:|債権譲渡は債権総論の頻出領域で2017年改正の核心(yobi-minpo-resources.md調べ)。譲渡制限特約の効力(466条2項・3項)を固めて取りに行く

譲渡制限特約の改正(466条)

改正前は、譲渡制限特約があれば債権譲渡は無効だった。
改正後は特約があっても債権譲渡は有効。ただし、特約を悪意・重過失で知っていた譲受人には債務者が対抗できる(466条3項)。

対抗要件(467条)

債務者への通知または債務者の承諾が対抗要件。第三者に対抗するには確定日付のある証書による通知・承諾が必要(467条2項)。

不法行為(709条〜724条)

一般不法行為(709条)の4要件

①故意・過失、②権利又は法律上保護される利益の侵害(違法性)、③損害の発生、④因果関係。なお前提として加害者に責任能力(712条・713条)が必要。

使用者責任(715条)— 外形理論

使用者は「事業の執行について」被用者が他人に損害を加えた場合に賠償責任を負う。外形理論(最判昭40.11.30)により「事業の執行について」を広く解釈。使用者の求償権は信義則上制限される(最判昭51.7.8)。

工作物責任(717条)— 占有者と所有者

占有者が1次的に責任を負うが、損害防止に必要な注意をした場合は免責あり。
占有者が免責された場合は所有者が2次的に責任を負う(無過失責任・免責なし)。

不法行為の消滅時効

損害及び加害者を知った時から3年(724条1号)。生命・身体の侵害は5年(724条の2)。不法行為の時から20年(724条2号)で消滅。

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同時履行の抗弁権(533条)

直感でつかむ「あなたが先に払わないなら、私も払わない」——双務契約の対等な盾。

要件・効果

要件①:双務契約から生じた対価的債務の存在

売買・賃貸借・請負など、双方が対価的な義務を負う契約であること。片務契約(贈与など)には適用なし。

「対価的」牽連関係が鍵。同一契約から生じた債務でなければならない。

要件②:相手方の債務が弁済期にあること

相手方の債務がまだ弁済期を迎えていない場合は、抗弁権を行使できない(533条但書)。

引っかけ注意:自分の債務が弁済期を過ぎていても、相手の債務が未到来なら使えない。

要件③:相手方が自己の債務の履行(の提供)をしていないこと

相手方がすでに履行の提供をした場合は、もはや抗弁権を行使できない(533条本文)。

「提供」で足りる点に注意。完全な履行まで待たずに抗弁権は消滅する。

効果:履行拒絶権(訴訟上は同時履行判決)

同時履行の抗弁権を行使すると、相手方の請求に対して履行を拒絶できる。
訴訟では「引換給付判決」が下り、相手方の給付と引換えに自己の給付をすれば足りる。
また、同時履行の抗弁権が存在する間は、債務者は履行遅滞に陥らない(履行期後も遅滞とならない)。

遅滞の問題と直結。相手が催告なしに解除・損賠請求する前提として、遅滞があることが必要。抗弁権があれば遅滞なし→解除不可。

主な適用場面

売買(代金と目的物の引渡し)・請負(代金と仕事の完成)・賃貸借終了時(賃料滞納と明渡し)。
不当利得返還請求(例:解除後の原状回復)にも533条が類推適用される(最判昭47.9.7)。

2017年改正の核心

契約不適合責任(562条〜572条)

直感でつかむ旧「瑕疵担保」を廃止 → 普通の債務不履行ルールに統合。請求順序を覚える。

旧法(瑕疵担保責任)との対比

項目旧法(瑕疵担保)現行法(契約不適合)
根拠570条(法定責任説が有力)562条〜564条(契約責任として統一)
対象隠れた瑕疵のみ種類・品質・数量に関する不適合(隠れていなくてもよい)
買主の帰責事由不問買主に帰責事由があれば請求不可(562条2項)
損害賠償信頼利益のみ(判例)債務不履行一般(履行利益も含む)
解除契約目的を達成できない場合のみ一般の解除規定(541条・542条)に服する

買主の4つの権利(優先順序)

① 追完請求(562条)

目的物の修補代替物の引渡し不足分の引渡しを請求できる。買主が選択するが、売主は買主に不相当な負担を課しない範囲で別の方法を選択できる(562条1項但書)。

まず「直してほしい」が出発点。

② 代金減額請求(563条)

相当の期間を定めて追完を催告し、期間内に追完がないとき、不適合の割合に応じて代金減額を請求できる(563条1項)。追完が不能・履行拒絶・定期行為等の場合は無催告で請求可(563条2項)。

「催告→不履行→減額」の流れ。代金減額は解除類似の権利で、帰責事由不要。

③ 解除(541条・542条準用)

一般の解除規定による。軽微な不適合は解除不可(541条但書)。売主の帰責事由は不要(2017年改正)。

契約不適合≠自動解除。催告→相当期間経過→解除の手順が必要(無催告解除事由でない限り)。

④ 損害賠償(564条→415条)

564条により415条の規定による損害賠償が可能。売主に帰責事由が必要(415条1項但書)。追完請求・代金減額請求と併用可。

損賠だけが「帰責事由必要」。他の3つは不要。この非対称が試験の頻出ポイント。

期間制限(566条)

買主は、不適合を知った時から1年以内に売主に通知しなければ、追完請求・代金減額請求・損害賠償・解除権を失う(566条)。
ただし、売主が引渡し時に不適合を知りまたは重過失で知らなかった場合は、1年制限は適用されない(566条但書)。また一般の消滅時効(知った時から5年・権利行使できる時から10年)も別途問題となる。

「1年以内に通知」≠「1年以内に提訴」。通知さえすれば時効期間内に訴訟を起こせばよい。

2017年改正で条文削除

危険負担(536条)— 債権者主義の廃止

直感でつかむ「もらう予定だった物が滅びた。でも代金を払わないといけないの?」— 改正で払わなくてよくなった。

改正前(削除された534条:債権者主義)

売買の目的物が特定物の場合、引渡前に滅失しても危険は買主(債権者)が負担した(534条)。つまり代金を払う義務が残った。「不公平」として批判の的だった条文。

2017年改正で534条は削除

現行法(536条):反対給付拒絶権(債務者主義に統一)

債務者の責めに帰することができない事由によって債務の履行が不能となったとき、債権者は反対給付の履行を拒絶できる(536条1項)。
例:売主が引渡前に目的物を火災で失った→買主は代金の支払いを拒絶できる。

「債権者主義廃止→反対給付拒絶権」がセットで頻出。

債権者の帰責事由がある場合(536条2項)

債権者の責めに帰すべき事由によって履行が不能になったとき、債権者は反対給付の履行を拒絶できない(536条2項)。この場合、債務者は反対給付を受ける権利を失わない。

例:買主が受取を拒んでいる間に火災→買主の帰責事由→代金支払義務は残る。

危険負担と解除の関係

履行不能の場合、危険負担(反対給付拒絶権)か解除(542条1項1号:無催告解除)かを選択できる。
危険負担は「払わなくてよい」という抗弁、解除は「契約をなかったことにする」という形成権。実務では解除が使われることが多い。

厳密に見る

保証債務(446条〜465条の10)

直感でつかむ「主債務者が払わなければ、私が払う」——補充性が普通保証と連帯保証を分ける。
2017年改正で個人根保証の極度額が義務化(465条の2)。

保証の3大性質

1附従性

主債務が存在しなければ保証債務も存在しない。主債務が無効なら保証も無効。主債務の減少につれて保証も縮小する。

2随伴性

主債務が債権譲渡で移転すると、保証債務も新債権者に移転する(ただし別個譲渡は不可)。

3補充性

主債務者が弁済しない場合に初めて保証人が弁済する義務を負う。催告・検索の抗弁権が補充性の表れ。

普通保証人の2つの抗弁権

催告の抗弁権(452条)

債権者が保証人に弁済を請求してきたとき、保証人は「まず主債務者に催告せよ」と主張して請求を拒絶できる。
例外:主債務者が行方不明・破産など(452条但書)。

連帯保証人にはこの抗弁権なし(454条)。

検索の抗弁権(453条)

債権者が主債務者への催告後も保証人に請求してきたとき、保証人は「主債務者に弁済できる財産があり執行が容易だ」と証明して、まずそちらに執行せよと主張できる。

連帯保証人にはこの抗弁権もなし(454条)。

普通保証と連帯保証の比較

項目普通保証連帯保証
催告の抗弁権(452条)ありなし(454条)
検索の抗弁権(453条)ありなし(454条)
分別の利益あり(保証人が複数の場合、頭数で分割)なし(各自が全額を保証)
主な適用場面比較的少ない金融実務では連帯保証が標準

個人根保証の極度額(465条の2・2017年改正)

個人が根保証契約(一定の範囲に属する不特定の債務を保証する契約)の保証人となる場合、極度額を定めなければ無効(465条の2第2項)。書面(電磁的記録を含む)で定めることが必要(446条2項・3項の準用)。
改正前は貸金等根保証(465条の2旧)のみ対象だったが、2017年改正で全ての個人根保証に拡大された(賃貸借の保証なども含む)。

「極度額の定めのない個人根保証は無効」——書面要件と合わせて試験頻出。

保証人の求償権(462条・459条)

保証人が主債務者に代わって弁済した場合、主債務者に対して求償権を取得する。受託保証人(主債務者の委託を受けた保証人)は支出全額を求償できる(459条)。無委託保証人は弁済当時に主債務者に利益となった限度でしか求償できない(462条)。

2017年改正で条文整備

弁済(473条〜504条)

直感でつかむ「誰が払えるか」「誰が払ってもいいか」——第三者弁済代位の組合せ問題。

第三者弁済(474条)— 2017年改正で整理

原則:第三者弁済は可能

債務の性質が許し、当事者が反対の意思を表示していない場合、第三者も弁済できる(474条1項)。

「第三者弁済は原則有効」が出発点。例外を覚える。

例外1:正当な利益のない第三者(474条2項)

弁済について正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済できない(474条2項本文)。
ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかった場合は有効(474条2項但書)。

「正当な利益を有する第三者」とは:保証人・連帯債務者・物上保証人・担保目的物の第三取得者など。

例外2:債権者の意思に反する場合(474条3項)

正当な利益を有しない第三者は、債権者の意思に反して弁済できない(474条3項)。

正当利益なし→「債務者の意思」AND「債権者の意思」の両方に反してはならない。

弁済による代位(499条〜501条)— 2017年改正で整理

弁済による代位とは

正当な利益を有する第三者(保証人・連帯債務者など)が債務者に代わって弁済すると、弁済した限度で債権者に代位し、債権者が持っていた担保権・優先権をそのまま行使できる(499条・500条)。

「代位」=債権者の地位に乗り移ること。主債務者に対し元の担保で請求できる強力な権利。

一部弁済による代位(502条)

債権の一部について代位弁済した場合、代位者と原債権者が担保権を共有するが、債権者が優先して行使できる(502条1項)。

「一部代位≠債権者と対等」。債権者が優先という点が問われる。

十一
厳密に見る

相殺(505条〜512条の2)

直感でつかむお互いの借りを「差し引き0」にする。相殺適状が要件。不法行為と差押えで例外あり。

相殺の要件(相殺適状:505条)

1双方が互いに同種の債権を有すること

金銭債権同士が典型。同種でない場合(金銭vs特定物)は相殺不可。

2双方の債務が弁済期にあること

自動債権(相殺する側の債権)は弁済期必須。受動債権(相殺される側)は未到来でも可(期限の利益を放棄)。

3債務の性質が相殺を許すこと

不代替的債務(芸術家の演奏など)は相殺不可。

4当事者間に相殺禁止の合意がないこと

合意で相殺を禁止することも可能(505条2項)。

相殺禁止の重要例外

不法行為債権との相殺禁止(509条)— 2017年改正で整理

以下の債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗できない(509条):
悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務(509条1号)
人の生命・身体の侵害による損害賠償の債務(509条2号)

改正前は「不法行為債権一般」が相殺禁止だったが、改正後は「悪意による不法行為」と「生命・身体侵害」に絞られた。過失による財産侵害の不法行為債権は相殺可能になった点が改正の核心。

差押えと相殺(511条)— 2017年改正で判例法理を明文化

差押え後に取得した債権を自動債権として相殺することは、差押え前の原因に基づいて生じた場合を除き、対抗できない(511条1項・2項)。
改正前は判例(最大判昭45.6.24)が「差押前の原因に基づく債権で相殺できる(無制限説)」を採用していたが、これを明文化。

差押えvs相殺は実務の頻出論点。「差押え前から自動債権を持っていれば相殺できる」が原則。

相殺の効力(506条)

相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺適状になった時点に遡って効力を生じる(遡及効)。相殺は一方的意思表示(形成権)で足り、相手方の承諾は不要。

十二
2017年改正で条文新設

賃貸借(601条〜622条の2)

直感でつかむ敷金原状回復が明文化。「どこまで修理する義務があるか」を法律が決めた。

敷金(622条の2)— 2017年改正で新設

敷金の定義と返還時期(622条の2)

敷金とは、いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生じる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する金銭(622条の2第1項)。
賃貸人は、賃貸借終了・明渡し後に、賃借人に対する未払賃料等を控除した残額を返還しなければならない(622条の2第1項1号・2号)。

改正前は判例・慣行で処理していた敷金関係を条文化。「明渡し後に返還」が原則で、明渡し前には返還請求できない。

原状回復義務(621条)— 2017年改正で明文化

賃借人の原状回復義務の範囲

賃借人は、賃借物に生じた損傷を原状に復する義務を負う(621条)。
ただし、以下の損傷は原状回復義務の対象
①賃借物の通常の使用・収益によって生じた損耗(通常損耗)
②賃借物の経年変化

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方を明文化。「タバコのヤニ・故意の傷→賠償あり」「日焼け・普通の使用→賠償なし」。

賃貸人たる地位の移転(605条の2)— 2017年改正で新設

不動産が譲渡された場合

賃借人が対抗要件を備えた賃貸借がある場合(登記または借地借家法上の引渡し)、その不動産が譲渡されると賃貸人たる地位は当然に譲受人に移転する(605条の2第1項)。
ただし、譲渡人と譲受人が賃貸人たる地位を留保する旨の合意をし、かつ譲受人がその不動産を譲渡人に賃貸する場合は、移転しない(605条の2第2項前段)。

敷金は新賃貸人に引き継がれる(605条の2第4項)。旧賃貸人への敷金返還請求はできなくなる。

賃借権の物権化と対抗要件(605条・借地借家法31条)

不動産賃借権は登記によって第三者に対抗できる(605条)。しかし現実には賃借権登記がなされることは少ない。借地借家法では、建物の引渡し(借地借家法31条)が対抗要件とされており、実務上はこちらで保護される。

十三
2017年改正で新設

定型約款(548条の2〜4)

直感でつかむ「利用規約に同意した覚えはないが、使ったから同意したことになる」——みなし合意の条件を押さえる。

定型約款の定義(548条の2第1項)

定型約款とは、定型取引(不特定多数の者を相手方として行う取引で、その内容の全部または一部が画一的であることが双方にとって合理的なもの)において、契約の内容とすることを目的として特定の者により準備された条項の総体。

電車・バスの運送約款、インターネットの利用規約、保険約款などが典型例。

みなし合意の要件(548条の2第1項)

以下のいずれかに該当する場合、定型約款の個別の条項についても合意したものとみなされる
①定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき
②定型約款準備者があらかじめ定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき

個別の条項を読んでいなくても合意したとみなされる——消費者保護の観点から「不当条項排除」とセットで理解する。

不当条項の排除(548条の2第2項)

定型約款の条項であっても、相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項であって、取引上の社会通念に照らして民法1条2項の基本原則(信義誠実の原則)に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものは、合意しなかったものとみなす(548条の2第2項)。

不当条項は「みなし合意の例外」。消費者契約法の不当条項規制と趣旨が共通。

定型約款の変更(548条の4)

定型約款準備者は、以下のいずれかに該当する場合、相手方との合意なく定型約款を一方的に変更できる(548条の4第1項):
①変更が相手方の一般の利益に適合するとき
②変更が契約をした目的に反せず、かつ変更の必要性・内容の相当性その他の変更に係る事情に照らして合理的なとき

変更するには、変更後の定型約款の内容および変更の効力発生時期をインターネット等で周知しなければならない(548条の4第2項)。

「一方的変更OK」だが、相手の利益に適合するか、または合理的変更であることが条件。要件を満たさない変更は無効。

十四
法定債権関係

不当利得(703条〜708条)

直感でつかむ「法律上の原因なく」得た利益は返す。ただし返す範囲は善意か悪意かで変わる——ここが得点源。

学習優先度:|不当利得は出題頻度が中程度の標準論点(yobi-minpo-resources.md調べ)。要件と返還範囲を押さえて取りに行く

不当利得とは、法律上の原因なく他人の財産・労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした場合に、その利益を返還させる制度(703条)。契約の無効・取消し・解除の後始末や、誤振込みなどの場面で問題になる。

一般不当利得の4要件(703条)

1受益

一方が利益(財産の増加・出費の免れ)を受けたこと。

2損失

他方に財産上の損失が生じたこと。

3因果関係

受益と損失の間に因果関係があること。

4法律上の原因がないこと

利益を正当化する契約・法律上の根拠が存在しないこと。

返還範囲は善意・悪意で変わる(703条・704条)

善意の受益者(703条)=現存利益

法律上の原因がないことを知らなかった受益者は、現に利益が存する限度(現存利益)で返還すれば足りる。すでに浪費して手元に残っていない分は返還を要しない。

「善意=現存利益」。ただし生活費など有益な支出に充てた分は現存利益として残ると解される点に注意。

悪意の受益者(704条)=全額+利息+損害賠償

法律上の原因がないことを知っていた受益者は、受けた利益に利息を付して返還し、なお損害があるときは損害賠償責任も負う(704条)。

善意=現存利益/悪意=全額+利息(+賠償)。この対応セットが暗記単位。「善意でも全額返還」とする肢は誤り。

特殊の不当利得(705条〜708条)

非債弁済(705条)

債務が存在しないことを知りながら弁済した者は、その給付の返還を請求できない(705条)。「ない」と知って払った以上、後から返せというのは許されない。

「知らずに」払った場合は原則返還請求できる。705条は「知りながら」が要件。

不法原因給付(708条)

不法な原因のために給付をした者は、その給付の返還を請求できない(708条本文)。例:賭博の負け金、愛人契約に基づく贈与。未登記不動産の引渡しも「給付」にあたり返還請求できず、反射的に受領者が所有権を確定的に取得する(最判昭45.10.21)。ただし不法な原因が受益者側にのみあるときは返還請求できる(708条ただし書)。

クリーンハンズの原則(自ら不法をした者は法の助けを借りられない)。「返還請求できない→反射的に相手が確定的に取得」という帰結が頻出。

誤振込みと不当利得(最判平8.4.26)

誤って他人の口座に振り込んでも、受取人には銀行に対する預金債権が成立する。しかし振込依頼人は受取人に対して不当利得返還請求権を有する。「預金債権は有効に成立するが、実体的には不当利得になる」という二段構えが問われる。

十五
だから、こうなる

出題者の四つの手口

手口① 起算点すり替え — 不当利得の消滅時効を「10年だけ」とする

「不当利得の返還請求権の消滅時効は、権利を行使できる時から10年である」→ 誤り。債権の消滅時効は主観的起算点から5年/客観的起算点から10年の二重期間(166条1項)。「知った時から5年」を省いて単一期間に見せ、早期に時効消滅させる肢に引っかからないこと。

対策:時効の数字は「5年/10年」の二重期間をセットで。単一期間しか示さない肢は疑う。

手口② 類似制度混同 — 連帯債務の「請求」を絶対効とする

「連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者にも効力が及ぶ」→ 誤り。2017年改正で請求は相対的効力に変更された(441条)。絶対的効力事由は弁済のほか更改(438条)・相殺(439条)・混同(440条)に限られる。旧法では履行の請求も絶対的効力だったため、改正前後の混同を突く。

対策:絶対効=弁済+更改・相殺・混同。請求・免除・時効の完成は相対効(改正で変更)。

手口③ 断定語+原則例外の逆転 — 譲渡制限特約違反を「無効」とする

「譲渡制限の特約に反してなされた債権譲渡は無効である」→ 誤り。2017年改正で譲渡の効力は妨げられない(466条2項)。譲受人が特約につき悪意・重過失のときは、債務者が履行を拒絶できる(466条3項)にとどまり、「無効」にはならない。

対策:改正後は「譲渡は有効・債務者は悪意重過失の譲受人に履行拒絶できる」。旧法の「無効(物権的効力)」と混同しない。

手口④ 主体すり替え — 正当な利益のない第三者の弁済を「できる」とする

「弁済につき正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反しても弁済することができる」→ 誤り正当な利益を有しない第三者は、原則として債務者の意思に反して弁済できない(474条2項本文)。さらに債権者の意思に反しても弁済できない(474条3項)。保証人・物上保証人・担保目的物の第三取得者などの「正当な利益を有する第三者」との区別が狙われる。

対策:正当な利益なし=債務者・債権者いずれの意思にも反して弁済不可。「利益あり」なら意思に反しても弁済可。

十六
触ってわかる ③

本番の肢で、手口を見破る

演習 1 / 連帯債務の効力

2017年民法改正後、連帯債務者の一人に対する請求の効力について、正しいものはどれか。

  • 連帯債務者の一人に対する裁判上の請求は絶対的効力を有し、他の連帯債務者にも時効完成猶予の効力が生じる。
  • 連帯債務者の一人に対して裁判上の請求をしても、他の連帯債務者には時効完成猶予の効力は生じない。
  • 連帯債務者の一人に対する請求は、債権者が他の連帯債務者にも同時に通知したときに限り、全員に効力が及ぶ。
  • 連帯債務者の一人に対する請求の効力は、各債務者の負担部分の割合に応じて按分的に他の債務者へ及ぶ。
演習 2 / 解除の帰責事由

2017年民法改正後の催告解除(541条)に関する記述として、正しいものはどれか。

  • 催告解除には、債務者の帰責事由が必要である。
  • 催告解除に債務者の帰責事由は不要だが、催告期間経過時の不履行が「軽微」な場合は解除できない。
  • 催告解除には帰責事由も不履行の軽微性の判断も不要で、催告さえすれば解除できる。
  • 催告解除は、債務者があらかじめ履行を明確に拒絶している場合にのみ認められる。
演習 3 / 工作物責任

民法717条の工作物責任に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  • 工作物の占有者は、損害防止に必要な注意をしたことを証明しても免責されない(無過失責任)。
  • 工作物の所有者は、損害防止に必要な注意をしたことを証明しても免責されない(無過失責任)。
  • 工作物の占有者は1次的責任を負い、所有者は2次的責任を負うが、いずれも過失があればのみ責任を負う。
本試験形式 1

民法の債権に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか(2017年改正後の法律による)。

  • 1 催告解除(民法541条)には、債務者の帰責事由が必要である。
  • 2 催告解除には債務者の帰責事由は不要だが、催告期間経過時に不履行が軽微であれば解除できない。
  • 3 個人が根保証契約の保証人になる場合、極度額を定める必要はなく、保証する債務の範囲を特定すれば足りる。
  • 4 連帯債務者の一人に対して行った裁判上の請求は、他の連帯債務者に対しても時効完成猶予の効力が生じる。
  • 5 不法行為に基づく損害賠償債務は、その全部について相殺が禁止されている。
本試験形式 2

民法の債権各論に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか(2017年改正後の法律による)。

  • 1 普通保証人には催告の抗弁権があるが、連帯保証人も同様に催告の抗弁権を有する。
  • 2 連帯債務者の一人についての免除は、他の連帯債務者には効力が及ばない(相対的効力)。
  • 3 個人根保証契約において極度額の定めがない場合、その極度額は保証人の資力の範囲内で有効とされる。
  • 4 譲渡制限特約が付いている債権は、特約があることを知りながら譲り受けた場合でも、譲受人が取得した債権は有効である。
  • 5 工作物の占有者は、損害防止に必要な注意をしたことを証明しても免責されない(無過失責任)。
民法・債権 — まとめ

解除の帰責事由は不要(軽微な不履行は不可)。連帯債務の請求・免除・時効は相対的効力。危険負担は債権者主義廃止→反対給付拒絶権。契約不適合の損賠のみ帰責事由必要(追完・減額・解除は不要)。不適合の通知は知った時から1年。同時履行の抗弁権が存在する間は履行遅滞なし。個人根保証は極度額必須(書面)。不法行為の相殺禁止は悪意による不法行為と生命・身体侵害のみ。敷金・原状回復(通常損耗・経年変化は義務なし)が明文化。不当利得の返還範囲は善意=現存利益/悪意=全額+利息+賠償、不法原因給付は返還請求不可(708条)。

自分の言葉で言うと?

2017年改正で解除の帰責事由は〔 ? 〕。連帯債務の絶対的効力事由は〔 ? 〕の4つ。同時履行の抗弁権がある間は履行〔 ? 〕に陥らない。契約不適合で帰責事由が必要な権利は〔 ? 〕のみ。不適合の通知期間は知った時から〔 ? 〕年。個人根保証は極度額の定めがなければ〔 ? 〕。不法行為との相殺禁止は〔 ? 〕と生命・身体侵害の2類型。

出典と基準日

  • 法令基準日:2026-04-01 現在施行の法令(令和8年度行政書士試験 想定)。
  • 根拠条文:民法415条・416条・427条〜440条・446条〜465条の10・466条〜467条・473条〜504条・505条〜512条の2・533条・536条・541条〜548条の4・562条〜572条・601条〜622条の2・703条〜708条・709条〜724条(e-Gov法令検索)。
  • 判例:最判昭40.11.30(外形理論)・最判昭51.7.8(求償信義則制限)・最判昭45.10.21(不法原因給付)・最判平8.4.26(誤振込みと不当利得)(裁判所判例DB)。
  • 改正基準:民法(債権関係)改正(平成29年法律第44号)2020年4月1日施行。

文中の語に点線が引かれた箇所はタップで定義が開きます。気づきは画面右下の「メモ」から書き出せます(端末内に保存)。

独立ファクトチェック:✅ PASS(2026-06-29 opus検証 → ❌2件+⚠️1件修正適用済み: 605条の2項番号逆転修正、548条の2選択的要件、465条の2書面要件根拠修正)。✅ 2026-07-01 追加分 PASS(2026-07-01 opus独立検証・修正なし: 不当利得節〈703・704・705・708条ただし書〉、最判昭45.10.21〈不動産の不法原因給付〉・最判平8.4.26〈誤振込みと不当利得〉、手口①〜④〈166条1項の二重期間・441条+438〜440条・466条2項3項・474条2項3項〉の条文番号・判例をWikibooks条文および姉妹一次資料で照合し正確と確認)。