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違憲審査基準はなぜ「二重の基準」なのか。薬事法判決が違憲になり、小売市場事件が合憲になった理由は何か。規制目的の二分論・審査基準の選択・判例の合憲/違憲を体得する章。
薬局の開設に距離制限を設けるとなぜ違憲なのに、小売市場の距離制限は合憲なのか。憲法が「表現の自由」を特別に保護する理由とは。私人間で差別があった場合、憲法は直接適用されるのか。
行政書士は、許認可申請・在留資格・不服申立など、公権力と市民の接点で実務を行う。憲法の人権規定は「どのような場合に国家が個人の権利を制限できるか」を決定する根本規範であり、行政法の解釈・適用の前提となる。とりわけ違憲審査基準(二重の基準・規制目的二分論)は、行政庁の処分の適法性を争う際の理論的基礎をなす。また、外国人の在留資格申請や私人間の権利調整(職場での不利益取扱い等)は行政書士実務の頻出場面であり、マクリーン事件・三菱樹脂事件の法理は直接実務に直結する。法令適合性の一次判断者として、行政書士は憲法的思考力を必要とする。
人権の出題は3つの問いに集約される。「誰に」(外国人・法人・未成年)、「どこまで」(公共の福祉による制約の限界)、「どの基準で」(違憲審査基準の選択)。
外国人は「権利の性質の許す限り」保障(マクリーン事件)。法人も「性質上可能な限り」保障(八幡製鉄事件)。
憲法は国家対個人の規範。私人間には直接適用されない。民法90条等の一般条項を介して間接適用(三菱樹脂事件)。
二重の基準:精神的自由は厳格に審査。経済的自由は緩やかに審査。民主主義の「前提」を守るため。
経済的自由の中でも消極目的(健康安全)→厳格な合理性の基準、積極目的(経済政策)→明白性の基準。
表現の自由・信教の自由などの精神的自由が侵害されると、その侵害に反対する声を上げること自体が難しくなる。民主主義が壊れると、選挙で修正することもできない。だから裁判所が特別に厳しく審査する必要がある。
これに対し、経済的自由の制約は、立法府が政策判断として見直せる。したがって裁判所は立法府の判断を尊重し、緩やかに審査すれば足りる——これが二重の基準の論理。
厳格な審査基準(LRA・必要最小限の手段):やむにやまれぬ政府利益があり、他に手段がないときのみ合憲。表現規制でよく使われる。
経済的自由(22条・29条)の審査基準は、規制の目的によって二分する。
| 消極目的規制 | 積極目的規制 | |
|---|---|---|
| 規制の目的 | 国民の健康・安全・秩序の保護 | 経済政策・中小企業保護・社会福祉 |
| 審査基準 | 厳格な合理性の基準(目的達成のために必要かつ合理的な手段か) | 明白性の基準(著しく不合理でなければ合憲) |
| 代表的判例 | 薬事法判決(最大判昭50.4.30)→違憲 | 小売市場事件(最大判昭47.11.22)→合憲 |
| 理由 | 手段の必要性・合理性を欠く | 著しく不合理とまでは言えない |
薬局の適正配置規制(距離制限)は消極目的(国民の健康保護)の規制。消極目的規制には「厳格な合理性の基準」を適用する。裁判所は、距離制限によって競争が排除されても医薬品の安全は保たれないと判断。距離制限は目的達成の手段として必要性・合理性を欠くため違憲(最大判昭50.4.30)。
13条は「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を保障する。判例・通説は、個人の人格的生存に不可欠な利益を包括的に保護する包括的基本権として位置づける。憲法に個別列挙されていない「新しい人権」の根拠条文となる。
情報を受け取る自由(21条)の積極的側面として、公権力に情報公開を求める権利にまで拡張。情報公開制度の憲法的根拠。
当初「一人にしてもらう権利」から自己情報コントロール権(自己に関する情報を自ら管理する権利)へと発展。13条を根拠とする。
政治家の私生活を題材にした小説が問題となり、日本で初めてプライバシーの権利を正面から認めた判決。プライバシーの権利を「私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利」と定義した。
弁護士会からの照会に応じ、市区町村が前科・犯罪経歴を回答したことが問題に。最高裁は「前科等は人の名誉、信用に直接関わる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する」と判示。回答は不法行為に当たるとした。
治療を受けるかどうか、ライフスタイルの選択など、自己の生き方に関わる事柄を自らの意思で決定する権利。13条の幸福追求権を根拠とする。インフォームド・コンセント(説明を受けた上での同意)の憲法的基礎。
表現の自由(21条)の規制には規制の内容によって適用する審査基準が異なる。この区別は精神的自由の審査において最重要の論点のひとつ。
| 規制の類型 | 意味 | 適用基準 | 例 |
|---|---|---|---|
| 内容規制 | 表現の内容それ自体を理由に規制 | 厳格審査基準(やむにやまれぬ利益+LRA) | 特定の思想・主義を禁じる法律 |
| 内容中立規制 | 表現の時・場所・方法を規制(内容を問わない) | 中間審査基準(重要な利益+LRAに準じる手段) | 夜間の拡声器禁止、デモの事前届出 |
「より制限的でない他の選びうる手段」があれば、現在の規制手段は違憲となるという考え方。目的達成のために必要最小限の手段を求める基準。精神的自由の内容規制に適用。
検閲の絶対的禁止(21条2項):検閲とは、行政権が主体となり、思想内容等の表現物を発表前に審査し、不適当と認めるものの発表を禁止すること。税関検査事件(最大判昭59.12.12)では、税関検査は輸入禁止止まりで発表前の審査ではないとして検閲には当たらないと判断。
検閲は絶対的禁止。「公共の福祉」でも正当化できない。
報道の自由は21条の保障を受ける。これに対し取材の自由は「憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する」と判示された。報道の自由(保障される)と取材の自由(尊重に値する)は保障の強さが一段違う。この事案では、裁判所によるフィルム提出命令が、公正な刑事裁判の実現という要請との比較衡量の結果、許容された。
新聞記者が外務省の女性事務官に接近し、日米間の機密電文を持ち出させた事案。最高裁は、報道機関が公務員に秘密漏示を働きかけても、真に報道目的で、手段・方法が社会観念上是認される相当なものであれば正当な業務行為となりうるとしつつ、本件は取材対象者の人格の尊厳を著しく蹂躙したもので、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法とした。
民事訴訟で、報道記者が取材源についての証言を拒めるかが争われた。最高裁は、取材源の秘密は職業の秘密(民訴法197条1項3号)に当たり、それが保護に値する場合には証言を拒絶できると判示。取材源の秘匿を取材の自由の一環として一定範囲で保護した。
捜査機関が報道機関の取材済みビデオテープを差し押さえた事案。最高裁は、公正な刑事裁判の実現ないし適正迅速な捜査の要請と取材の自由が受ける影響を比較衡量し、やむを得ない場合には差押えも許容されるとした。博多駅事件(裁判所の提出命令)の比較衡量の枠組みを、捜査機関の差押えの場面に及ぼしたもの。
拘置所内の未決勾留者(在監者)に対する新聞閲読の制限が問題となった。最高裁は、在監者の知る自由(21条)の制約について、「新聞閲読の自由は憲法21条の精神に照らし尊重に値する」としつつも、「監獄内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性が認められる場合」には制限できると判示。閲読制限を合憲とした。
社会保険事務所の常勤職員(厚生労働事務官)が休日に職務と無関係な政党機関紙を配布した行為が、国家公務員法の政治的行為禁止規定に問われた事案。
最高裁は、同規定について合憲限定解釈を施し、「国民全体の奉仕者として政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる行為」のみが禁止されると解釈。Xの行為はこれに当たらないとして構成要件不該当=無罪とした。
旧:目的効果基準(津地鎮祭 最大判昭52.7.13):目的が世俗的で効果が宗教の援助等にならなければ合憲。地鎮祭は合憲。
新:総合判断基準(空知太神社 最大判平22.1.20):信教の自由の保障の確保という制度趣旨を踏まえた総合的判断に移行。
ポポロ事件(最大判昭38.5.22):大学の自治の趣旨は大学の学問研究の自由の保障にある。学生の集会が大学の自治の恩恵を受けるためには、真に学問的研究又はその結果発表のためのものでなければならない。
森林法共有林分割制限事件(最大判昭62.4.22):共有林の分割制限は共有の本質的属性である分割請求権を侵害し、立法目的との間に合理的関連性がない。29条2項違反で違憲。
憲法29条1項 財産権は、これを侵してはならない。
憲法29条2項 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
憲法29条3項 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
生存権の法的性格について、判例はプログラム規定説的立場をとるとされる。
生活保護基準額の設定。傍論において25条は「直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない」とし、具体的基準は厚生大臣の広範な裁量に委ねられるとした。
障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止。社会保障の給付組合せは広範な立法裁量に委ねられ、著しく合理性を欠くとは言えず合憲。
全農林警職法事件(最大判昭48.4.25):国家公務員の争議行為禁止規定の合憲性。公務員の労働基本権は一定の制約に服する。
14条の「法の下の平等」は、合理的な区別まで禁じるものではない。合理的根拠のない差別のみが違反となる。
尊属に対する尊重保護の立法目的は合理的だが、尊属殺の法定刑が通常の殺人に比べて著しく不合理な程度に重く、14条1項に違反。
婚姻した父から認知された子に国籍取得を認め、婚姻しない父から認知された子には認めない規定。社会情勢の変化により、不合理な差別として違憲。
女性の再婚禁止期間(旧民法733条)のうち100日超の部分は、父性推定の重複回避に必要な範囲を超えており違憲。なお、2024年民法改正により再婚禁止期間は完全廃止済み。
外国人も、権利の性質上日本国民のみを対象とするものを除き、憲法の人権規定が及ぶ。入国の自由・再入国の自由は保障されない。在留中の政治活動の自由は保障されるが、在留期間更新拒否の事由になりうる。
私企業が試用期間中に思想を理由に本採用を拒否したことが問題に。憲法の人権規定は国家と個人の関係を規律するもので、私人間には直接適用されない(間接適用説)。民法90条(公序良俗)等の一般条項を介して間接的に適用。
会社による政党への政治献金。会社も「性質上可能な限り」人権の享有主体となりうる。政治活動の自由は法人にも保障され、政治献金は適法。
判例の事案を読み、合憲か違憲かを判定する。審査基準をどこに当てはめたかも確認する。
事案を読み、最高裁の結論を予想する。
薬事法 vs 小売市場、朝日訴訟 vs 堀木訴訟——似ているのに結論が違う4ペアで分かれ目を体得する。
「外国人にはすべての人権が日本国民と同様に保障される」→ 誤り。権利の性質の許す限り保障される(性質説・マクリーン事件)。参政権・入国の自由は外国人には保障されない。
「憲法の人権規定は私人間にも直接適用される」→ 誤り。判例(三菱樹脂事件)は間接適用説。民法90条等の一般条項を介して間接的に適用。
「空知太神社事件でも目的効果基準が用いられた」→ 誤り。空知太神社事件(最大判平22.1.20)では総合判断基準に移行。
「薬事法判決は積極目的規制として明白性の基準で合憲」→ 誤り。薬事法は消極目的規制→厳格な合理性の基準→違憲。小売市場は積極目的規制→明白性の基準→合憲。
「25条は国民が裁判で直接援用できる具体的な権利を保障する」→ 誤り。朝日訴訟(最大判昭42.5.24)はプログラム規定説。具体的権利は法律で具体化されて初めて発生。
「取材の自由は、報道の自由と同様に憲法21条によって保障される」→ 誤り。博多駅事件(最大決昭44.11.26)は取材の自由を「憲法21条の精神に照らし十分尊重に値する」と述べたにとどまる。「尊重に値する」を「保障される」に格上げするのが典型のワナ。
「尊属殺重罰規定違憲判決は、尊属を尊重するという立法目的自体が違憲だとした」→ 誤り。最大判昭48.4.4は、立法目的(尊属への尊重報恩)は合理的としつつ、刑の加重の程度が著しく不合理(手段の違憲)だから14条違反とした。目的と手段のどちらが違憲かを取り違えさせる。
マクリーン事件の判例によれば、外国人の人権保障はどのように判断されるか。
三菱樹脂事件の判例によれば、憲法の人権規定は私人間に直接適用されるか。
空知太神社事件(最大判平22.1.20)が用いた政教分離の審査基準はどれか。
行政書士試験と同形式の5肢択一問題。選択肢をよく読み、正確な基準・判例に基づいて解答する。
憲法上の二重の基準論に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
人権の享有主体に関する次の記述のうち、判例の立場として妥当なものはどれか。
憲法の人権に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
二重の基準が必要な理由:精神的自由が侵害されると〔 ? 〕が機能しなくなるため、裁判所が特別に〔 ? 〕な審査を行う。外国人の人権は「権利の〔 ? 〕の許す限り」保障される(マクリーン事件)。プライバシー権(13条)は「〔 ? 〕」事件で最初に認められたが、その判決は〔 ? 〕審である。
新しい人権(13条):プライバシー権・知る権利・自己決定権は幸福追求権から導く。前科照会事件(昭56)でプライバシー保護を確認。精神的自由の内容規制は厳格審査(LRA)・内容中立規制は中間審査。よど号事件(昭58)は在監者の知る自由を「相当の蓋然性」基準で制限可能とした。堀越事件(平24)は国公法の政治活動禁止規定を合憲限定解釈し無罪。経済的自由は規制目的の二分(消極→厳格な合理性・積極→明白性)。外国人は性質の許す限り保障。私人間は間接適用(三菱樹脂)。生存権はプログラム規定説。
薬事法判決が違憲になった理由:〔 ? 〕→〔 ? 〕→距離制限は手段として必要性・合理性を欠く。
三菱樹脂事件の論理:憲法は〔 〕の規範 → 私人間には〔 〕 → 民法の一般条項を介して〔 〕。