shikaku目次へ

この章は5つの論点ユニットに生まれ変わりました。短く区切って学べて、ドリル・索引とつながっています。 新しい「行政手続法」をはじめる →

この旧版は当面そのまま読めます。

行政書士 / 行政法 ・ 行政手続法手続
行政法の柱 ②

行政手続法 — 行政のルールブック

取消訴訟は「事後の救済」。行政手続法は事前のルール——処分を出す前に、行政機関は何をしなければならないか。義務と努力義務の線引き、聴聞と弁明の分岐を、条文番号ごとに体で覚える章。

法令基準日:2026-04-01 現在施行の法令(令和8年度想定) / 頻出度:A(毎年3-4問・条文数値が直接問われる) / 主たる根拠:行政手続法全体(5-45条)

この章の問い

あなたの飲食店の営業許可が取り消されそうだ。行政機関は取消しの前に何をしなければならないのか? 「審査基準」と「処分基準」——似た名前の二つは、なぜ片方だけが義務なのか?

なぜ行政書士試験で問われるのか

行政書士は行政手続の専門家として、依頼者の申請から処分までのプロセスに立ち会う。審査基準を知らなければ申請の準備を助けられず、聴聞手続を知らなければ不利益処分に対して依頼者の権利を守れない。行政手続法は「行政のルールブック」であるとともに、行政書士が職務を遂行するための実務地図でもある。試験で義務・努力義務・聴聞・弁明の細目が繰り返し問われるのは、これらが実務で直結して使われる知識だからだ。

頻出度の目安

申請に対する処分・不利益処分の手続は、自前の論点マップ(gyousei-anki-map)で★★★=最優先の論点が集中する最重要ゾーン——聴聞/弁明の区別(2-2)、理由提示義務の範囲(2-3)、審査基準〔義務〕/処分基準〔努力義務〕の逆転ひっかけ(2-4)はいずれも「高頻度×高難度」と位置づけられる。義務/努力義務・聴聞/弁明・意見公募の細目を落とさないことが合否を分ける。

全体像

行政手続法の5つの柱

行政手続法(1993年制定)は、行政が処分や行政指導をする際の事前手続のルールを定めている。大きく5つのカテゴリに分かれる。

1申請に対する処分(5〜11条)

あなたが行政に許可を求めた → 審査基準は? 応答期間は? 拒否するなら理由は?

2不利益処分(12〜31条)

行政があなたに不利益を課す → 処分基準は? 言い分を聞く手続は?(聴聞 or 弁明)

3行政指導(32〜36条の3)

法的拘束力のない「お願い」。従う義務はないし、従わないことを理由に不利益に扱ってはならない。

4届出(37条)

「受理」は必要ない。届出書が形式上の要件に適合していれば、提出先の事務所に到達した時点で届出義務は完了する。

⑤ 意見公募手続(パブリックコメント)(38〜45条)

命令等(政令・省令等)を定めるとき、案を公示して広く意見を求める。意見提出期間は30日以上。提出意見は十分考慮する義務(「反映」義務ではない)。

直感でつかむ

「義務」と「努力義務」の見分け方

行政手続法の択一では、義務か努力義務かの一語の違いで正誤が分かれる。全部の条文を丸暗記する必要はない。原則はシンプルだ。

判断の直感その基準は国民が見るべきものか、行政の内部判断か。

審査基準(申請に対する処分のルール)は、申請者が知らなければ準備できない。だから設定も公表も義務

処分基準(不利益処分の判断ルール)は、行政の内部基準。公表すると悪用されるおそれがある。だから設定も公表も努力義務

標準処理期間(いつまでに回答するか)は、目安に過ぎない。だから努力義務

理由の提示(なぜその処分をしたか)は、申請拒否でも不利益処分でも義務。理由を示さなければ名宛人は争いようがない。

厳密に見る

義務/努力義務の完全マップ と 聴聞/弁明の分岐

以下の表が、行政手続法の択一の「答え」そのもの。条文番号ごとに覚える。

義務 vs 努力義務マップ

項目区分条文
審査基準の設定・公表義務5条
標準処理期間の設定努力義務6条
理由の提示(申請拒否)義務8条
処分基準の設定・公表努力義務12条
理由の提示(不利益処分)義務14条
意見公募手続の実施義務39条

次に、不利益処分の事前手続——聴聞弁明の機会の付与の分岐。処分の重大さで決まる。

聴聞 vs 弁明の機会の付与

聴聞(13条1項1号)弁明(13条1項2号)
対象許認可等の取消し(イ)、資格・地位の剥奪(ロ)、役員の解任命令(ハ)、行政庁が相当と認めるとき(ニ)それ以外の不利益処分
方法口頭審理(法廷に近い)原則書面
代理人規定なし
主宰者行政庁が指名する職員(当事者・参加人及びその親族等は除斥・19条2項)
申請拒否処分に聴聞は不要

「申請を拒否された → 聴聞を経なければならない」は誤り。聴聞・弁明が必要なのは不利益処分(12条以下)だけ。申請拒否処分に必要なのは理由の提示(8条)のみ。

理由提示の「程度」——どこまで書けば足りるか(8条・14条)

理由提示は「義務」であることに加え、どの程度詳しく書くかまで問われる。記述式でも狙われるホットゾーン。単に根拠条文を挙げるだけでは足りない、というのが判例の到達点だ。

一般旅券発給拒否処分の理由付記として「旅券法13条1項5号に該当する」とのみ記載したのは不十分。いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して拒否したのかを、申請者がその記載自体から了知しうるものでなければならない。(一般旅券発給拒否事件・最判昭60.1.22)

理由提示の程度:条文番号だけでは足りない

拒否処分・不利益処分の理由は、①適用した法規②その適用の基礎となった事実関係の両方を、名宛人が処分書の記載自体から読み取れる程度に示す必要がある。

「根拠条文さえ書いてあれば理由提示として十分」→ 誤り。適用法規と事実関係の両方が記載自体から読み取れなければならない(最判昭60.1.22)。記述式では「理由の提示が求められる程度」を問う出題があるため、この判例の規範を答案フレーズで言えるようにしておく。

触ってわかる ①

義務 or 努力義務 — ジャッジ・トレーナー

条文が出て、「義務」か「努力義務」かを即答する。直感で答えてから、条文番号と理由を確認していく。

予想 → 答え合わせ

義務 or 努力義務?

条文の内容を読み、「義務/努力義務」を選ぶ。理由と条文番号がその場で出ます。

1 / 8
行政手続法における「意見公募手続の実施」は…?
義務か、努力義務か?
触ってわかる ②

聴聞 or 弁明 — ジャッジ・トレーナー

不利益処分の種類から、聴聞が必要か、弁明で足りるかを判定する。処分の「重さ」で分岐することを体で覚える。

予想 → 答え合わせ

聴聞 or 弁明?

処分の内容を読み、「聴聞/弁明」を選ぶ。根拠条文がその場で出ます。

1 / 6
行政庁が「医師免許を取り消す」場合…事前手続は聴聞? 弁明の機会の付与?
事前手続は聴聞? 弁明の機会の付与?
触ってわかる ③

結論が反転する「分かれ目」を見る

「審査基準」と「処分基準」——名前は似ているのに結論が逆になる。4つのペアで分かれ目を体得する。

スイッチで切り替え

混同ペア弁別スイッチ

タブで4つのペアを切り替え。左と右の「分かれ目」に注目。

義務
審査基準の設定・公表
申請者のための基準。知らなければ準備できない → 義務(5条)
努力義務
処分基準の設定・公表
行政の内部基準。公表すると悪用のおそれ → 努力義務(12条)
分かれ目 国民が見るべき基準(審査基準)→ 義務。行政内部の判断基準(処分基準)→ 努力義務。
だから、こうなる

出題者の六つの手口

手口① 審査基準を「努力義務」に変える

「審査基準を定めるよう努めなければならない」→ 誤り。審査基準の設定は義務(5条)。

対策:「審査基準」が出たら義務。「処分基準」が出たら努力義務。

手口② 処分基準を「義務」に変える

逆パターン。「処分基準を定め、公にしなければならない」→ 誤り。処分基準は努力義務(12条)。

対策:手口①と対。セットで覚える。

手口③ 聴聞と弁明の対象を逆にする

「営業許可の取消しには弁明の機会の付与で足りる」→ 誤り。許認可の取消しは聴聞(13条1項1号)。

対策:「取消し」「剥奪」「解任」→ 聴聞。それ以外 → 弁明。

手口④ 意見提出期間の日数を変える

「意見提出期間は20日以上」→ 誤り。正しくは30日以上(39条3項)。

対策:「30日」を覚える。20日や14日は引っかけ。

手口⑤ 意見公募の「反映義務」をでっち上げる

「提出された意見を命令等に反映しなければならない」→ 誤り。「十分考慮」義務にとどまる(42条)。

対策:「反映」か「考慮」か、一語の違いで正誤が分かれる。

手口⑥ 意見公募の対象を「法規命令だけ」に狭める

「意見公募手続が必要なのは政令・省令などの法規命令に限られる」→ 誤り。対象の「命令等」には審査基準・処分基準・行政指導指針も含まれる(2条8号・39条)。

対策:意見公募の対象=命令等(法規命令+審査基準+処分基準+行政指導指針)。「行政指導指針は対象外」も誤り。

触ってわかる ④

本番の肢で、手口を見破る

演習 1 / 義務と努力義務

行政手続法に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  • 行政庁は、申請に対する処分の審査基準を定めるよう努めなければならない。
  • 行政庁は、不利益処分の処分基準を定め、かつ、これを公にしなければならない。
  • 行政庁は、申請がその事務所に到達してから処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めなければならない。
  • 意見公募手続は、命令等を定めようとする場合に実施するよう努めなければならない。
演習 2 / 聴聞と弁明

不利益処分の手続に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  • 許認可等を取り消す不利益処分をする場合は、弁明の機会の付与で足りる。
  • 不利益処分をする場合には、常に聴聞を経なければならない。
  • 聴聞は書面により行い、弁明の機会の付与は口頭により行う。
  • 聴聞の主宰は行政庁が指名する職員が行うが、当該聴聞の当事者又は参加人は主宰者となることができない。
演習 3 / 意見公募手続

意見公募手続に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。

  • 命令等を定めようとする場合、命令等制定機関は意見公募手続を実施しなければならない。
  • 意見提出期間は、命令等の案の公示の日から起算して30日以上でなければならない。
  • 命令等制定機関は、提出された意見を命令等に反映しなければならない。
  • 命令等制定機関は、意見公募手続の結果と、提出意見を考慮した理由を公示しなければならない。
本試験形式

5肢択一 模擬問題

本試験形式 1

行政手続法の申請に対する処分に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。(法令基準日:2026-04-01)

  • 1 行政庁は、申請に対する処分の審査基準を定めるよう努めなければならない。
  • 2 行政庁は、申請を受けた場合には、その申請が形式上の要件に適合しているかどうかを審査し、申請が要件に適合しない場合には補正を求め、これに応じなければ返却することができる。
  • 3 申請に対する処分を拒否する場合、行政庁は必要と認めるときにのみ理由を示せばよい。
  • 4 行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは公にしておかなければならない。
  • 5 行政庁は、申請拒否処分をしたときは、申請者の求めがある場合に限り、理由を示せばよい。
本試験形式 2

行政手続法に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。(法令基準日:2026-04-01)

  • 1 行政庁が許認可等を取り消す不利益処分をしようとする場合、弁明の機会の付与で足りる。
  • 2 聴聞は原則として書面により行われ、当事者は口頭で意見を述べることができない。
  • 3 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
  • 4 届出は行政庁による受理の意思表示があった時点で、届出義務の履行が完了する。
  • 5 意見公募手続において、命令等制定機関は提出された意見を命令等に反映しなければならない。
自分の言葉で言うと?

行政指導とは〔 ? 〕。行政指導に従わなかった場合、行政庁は〔 ? 〕ことができる/できない。届出と申請の違いは〔 ? 〕

行政手続法 — まとめ

行政手続法の択一は義務 vs 努力義務の一語で正誤が決まる。審査基準・理由提示・意見公募手続は義務。標準処理期間・処分基準は努力義務。聴聞と弁明は処分の重大さで分岐する——取消し・剥奪・解任は聴聞、それ以外は弁明。意見提出期間は30日以上、考慮義務はあるが反映義務はない。

自分の言葉で言うと?

審査基準の設定は〔 ? 〕、処分基準の設定は〔 ? 〕。許認可の取消しには〔 ? 〕が必要で、それ以外の不利益処分には〔 ? 〕で足りる。

手続

出典と基準日

  • 法令基準日:2026-04-01 現在施行の法令(令和8年度行政書士試験 想定)。
  • 根拠条文:行政手続法5条、6条、8条、12条、13条、14条、19条、32条、35条、36条の2、36条の3、37条、38条、39条、42条、43条(e-Gov法令検索)。
  • 科目別配点は公式非公表のため本章では数値を断定しない。

文中の語に点線が引かれた箇所はタップで定義が開きます。気づきは画面右下の「メモ」から書き出せます(端末内に保存)。読書の進み具合は上端のバーに記録されます。

独立ファクトチェック:✅ PASS(2026-06-29 opus検証 → 6件修正適用済み: 19条2項除斥事由、意見公募39条、37条形式的要件、13条1項1号ニ追加、演習2修正、二重scriptタグ)/ 2026-07-01 opus再検証: 追加分(審査基準5条=義務・標準処理期間6条=努力義務・理由提示8/14条=義務・処分基準12条=努力義務・聴聞弁明13条1項1号/2号・意見公募39条3項30日/42条考慮/43条公示・旅券発給拒否 最判昭60.1.22)を照合、誤り0件。