この章は6つの論点ユニットに生まれ変わりました。短く区切って学べて、ドリル・索引とつながっています。 新しい「処分性」をはじめる →
この旧版は当面そのまま読めます。
なぜ"勧告"や"通知"は裁判で取り消せて、"用途地域の指定"は門前払いなのか。この線引き=処分性を、出題者のひっかけごと、体で覚える章。
役所から届いた一片の「通知」。これを裁判で取り消せるものと、取り消せないものがある。名前は同じ「通知」なのに、何が両者を分けているのか?
行政書士は許認可申請の代理を業とする。申請が拒否されたとき、その「拒否通知」が取消訴訟で争える処分に当たるかどうかは、依頼者への助言に直結する。処分性を判断できなければ、不服申立ての手段選択(審査請求か取消訴訟か)すら適切に行えない。試験では毎年A問題として出題され、「行政書士が行政法を知っているか」の試金石となっている。
役所の処分に「それは違法だ、取り消せ」と裁判で争うのが取消訴訟?行政庁の処分の取消しを求める抗告訴訟(行訴法3条2項)。行政事件訴訟のなかで最もよく出る類型。。ただし、裁判所は「中身が違法かどうか」をいきなり見てはくれない。その手前に、通らねばならない三つの門(訴訟要件)が立っている。
三つの門をすべて通って、はじめて「その処分は違法か」という本案?訴訟の中身(請求に理由があるか)の審理。訴訟要件=門をクリアして初めて入れる。の審理に入れる。どれか一つでも欠ければ、中身を見てもらえず却下される。本章の主役は、その第一の門——そもそも取消訴訟の対象(処分)といえるか=処分性である。第二の門(原告適格)・第三の門(訴えの利益)は、続く章で扱う。
第一の門の門番は、難しい顔をしているが、実は問いは一つしかない。
動かしたなら、門の中へ(取消訴訟で争える)。動かしていない——ただの予告・内部の話・任意のお願い・私人同士の取引なら、門前で却下。出題者が仕掛けてくるひっかけは、結局この一点を「動かしたように見せかける/動かしていないように見せかける」だけだ。だから、線引きの感覚さえ掴めば、ほとんどの肢は見抜ける。
「処分性がある=その処分は違法で、取り消される」と思い込むと、必ず足をすくわれる。処分性は入口(門)を通れるかの話にすぎない。違法かどうかは、門を通った先の本案でこれから審理する、まったく別の問題だ。
処分性の根拠は、行政事件訴訟法3条2項。取消訴訟の対象を、こう定義する。
行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(行訴法3条2項)
判例は、この「公権力の行使に当たる行為」を、次の二つの要素の両方を満たすものと読んできた。直感の問い「公権力が/直接動かしたか」が、そのまま二要素に対応する。
国・自治体が、一方的・権力的に行う行為か。相手の同意を前提とする私法上の契約や、ただの事実行為は外れる。
特定の人の権利義務を、直接かつ確定的に変動させるか。一般的・抽象的な規制や、行政内部だけの効果は外れる。
判断の鉄則は「形式でなく実質」。行為の名前——勧告・告示・通達・計画・条例——に惑わされてはいけない。「勧告」でも従わざるを得なければ処分になり、「条例」でも名指しで権利を奪えば処分になる。出題者はこの名前と実質のズレを突いてくる。
二要素に加え、効果が国民に向けて外部に現れること(外部性)も要素として挙げられる。行政内部の通達(庁内限り)が処分性を否定されるのは、この外部性を欠くからだ。
「公権力の行使」概念の出発点を示したのが、ごみ焼却場の設置をめぐる判例。私法上の契約に基づく設置は公権力の行使に当たらない、とした(処分性の定義判例)。第一要素で落ちる典型例である。
線引きは、読むだけでは身につかない。先に自分で「あり/なし」を予想してから、判断軸で答え合わせをする。間違えた事案ほど、記憶に残る(これがいちばん効く勉強法だ)。Tier1(★最重要・絶対落とせない)から始まる。
事案を読み、「あり/なし」を選ぶ。理由と判例がその場で出ます。
出題者がいちばん仕掛けやすいのが、そっくりなのに結論が逆のペアだ。「告示」「計画」「勧告」「条例」「通知」——同じ顔で、一方は処分性あり、もう一方はなし。何が結論を反転させているのか、その分かれ目だけを見ていく。
タブで5つのペアを切り替え。左(あり)と右(なし)の「分かれ目」に注目。
これらは「あり」だけ、または「なし」だけを単独で覚えると、本番で必ず取り違える。必ずペアで——「二項道路の告示はあり、用途地域の指定はなし。分かれ目は"特定の土地を名指しして退路を断つか"」と、分かれ目ごと口に出せる状態にする。
処分性の択一は、知識を問うようでいて、実は「正しそうな誤り」を見破れるかを問うている。手口は四つに集約できる。直前期は、この四つを意識して肢を読むだけで正答率が上がる。
「土地区画整理事業計画の決定に処分性は認められない」——昔の判例ならそうだが、最大判で変更され、いまは「あり」。古い結論を混ぜてくる。
「告示は一般的規制だから処分性なし」「条例は立法だから処分性なし」——名前で一般化させる罠。二項道路の告示も、保育所廃止条例も「あり」。実質で判断する。
「行政指導には一切処分性がない」——原則は「なし」だが、病院開設中止の勧告のような例外がある。「すべて・常に・一切・必ず」が付いた肢は、例外で崩れやすい。
「処分性が認められれば、その処分は取り消される」——誤り。処分性は入口(訴訟要件)を通れるかの話。違法かどうかの本案は、その先の別問題。
過去問形式で、いまの四つの手口を実戦投入する。選ぶ前に、どの手口が仕掛けられているかを考えてみよう。
処分性に関する次の記述のうち、判例に照らして妥当なものはどれか。
処分性に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
次のうち、判例上 処分性が認められないものはどれか。
処分性に関する次の記述のうち、判例に照らして妥当なものはどれか。
取消訴訟における処分性に関する次の記述のうち、判例に照らして妥当なものはどれか。
処分性の二要素とは〔 ? 〕と〔 ? 〕。病院開設中止勧告に処分性が認められた理由は〔 ? 〕。通達に処分性がない理由は〔 ? 〕。
処分性とは、公権力が、特定人の権利・地位を、直接・確定的に動かしたか。判断は名前でなく実質。そして処分性あり ≠ 勝訴——通れたのは入口だけ。混同ペアは「分かれ目」ごと、対応セットで言えるようにする。
処分性とは、公権力が〔 ? 〕の権利を〔 ? 〕に動かすこと。名前が「勧告」「告示」「条例」でも、〔 ? 〕で判断する。