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この章は4つの論点ユニットに生まれ変わりました。短く区切って学べて、ドリル・索引とつながっています。 新しい「国家賠償法・損失補償」をはじめる →

この旧版は当面そのまま読めます。

行政書士 / 行政法 ・ 国家賠償法賠償
行政法の柱 ④

国家賠償法 — 国が賠償するとき

行政が違法に損害を与えたら、誰が賠償するのか。国家賠償法はたった6条の法律だが、1条(人のミス)と2条(モノの欠陥)の使い分けが試験の生命線。過失責任と無過失責任の分岐を、判例で追う章。

法令基準日:2026-04-01 現在施行の法令(令和8年度想定) / 頻出度:A(毎年2-3問+記述式の出題可能性大) / 主たる根拠:国家賠償法1条〜6条

この章の問い

市道の路面に穴が開いていて、あなたが転倒して骨折した。この場合の賠償責任は1条か2条か? 公務員に「過失」がなくても賠償されるのか? そして、公務員個人に直接請求できるのか?

なぜ行政書士試験で問われるのか

行政書士は依頼者が行政から損害を受けた場合に、その救済手段を案内する場面がある。国家賠償法は民法の不法行為とは異なり、公権力の行使や公の営造物という行政固有の概念を軸にした特別法だ。「1条か2条か」の判断、公務員個人への請求の可否、求償権の条件——これらは依頼者に正確な説明ができるかを問う実務直結の知識。判例が頻出するのも、条文がわずか6条と少なく、実際の法解釈は判例が積み上げてきた背景がある。

頻出度の目安

国家賠償法は、自前の論点マップ(gyousei-anki-map)で★★★=最優先の論点が並ぶ得点源——公務員個人の免責・求償の故意重過失要件(5-A-3・5-A-4)、2条の無過失責任〔1条との違い〕(5-B-1)はいずれも「毎年出題・混同しやすい高頻度論点」と位置づけられる。国賠は毎年2問前後の「取りに行く」ゾーン。1条/2条の区別・公務員個人の免責・求償の故意重過失を落とさないことが鍵。

全体像

6条しかない法律の、2本の柱

国家賠償法は1947年制定、わずか6条の短い法律。中核は1条2条の2本柱。残りは補則的規定。

11条 — 人のミス

公務員が違法に損害を与えた場合の賠償責任。故意・過失が要件(過失責任)。

22条 — モノの欠陥

公の営造物(道路・河川等)の設置管理の瑕疵による損害賠償。過失は不要無過失責任)。

残りの4条

3条=費用負担者も賠償責任を負う。4条=国賠法に規定がなければ民法が適用される。5条=他の法律に特則があればそれが優先。6条=外国人への適用は相互保証主義。

直感でつかむ

1条と2条の分け方

判断の直感のミスなら1条(過失が要る)。モノの欠陥なら2条(過失は要らない)。

公務員が違法な処分をした、警察官が暴行した——これは人の行為が原因。1条が適用され、故意・過失が要件になる。

道路に穴が開いていた、崖から落石があった——これはモノ(営造物)の欠陥が原因。2条が適用され、管理者の過失は問われない

公務員個人に直接請求できるか?

できない。国賠法が適用される場合、公務員個人は被害者に対して民法709条の責任を負わない(最判昭30.4.19)。賠償義務者は国または公共団体のみ。ただし、国・公共団体は公務員に故意・重過失があれば求償できる(1条2項)。

厳密に見る

1条の要件・2条の要件・求償権

1条の要件(過失責任)

要件内容
①公権力の行使行政処分に限らず、権力的事実行為・立法行為・司法行為も含む広い概念
②公務員国家公務員・地方公務員を問わない
③職務を行うについて外形標準説:客観的に職務行為と見られれば足りる
④故意または過失主観的要件。2条と異なり過失が必要
⑤違法職務行為基準説:法令に違反しているか
⑥損害の発生他人に損害を加えたこと

2条の要件(無過失責任)

要件内容
①公の営造物道路・河川・公園・学校等。管理権があれば所有権の帰属は問わない
②設置・管理の瑕疵「通常有すべき安全性」を欠くこと。管理者の過失は不要
③損害の発生他人に損害を生じたこと

求償権の発生条件

1条の求償(1条2項)2条の求償(2条2項)
求償先当該公務員損害原因に責任ある者(例:工事施工者)
条件故意または重過失のある場合のみ責任を有する場合

「免責」と「求償」を三者関係で一枚に(毎年出題)

公務員個人をめぐるお金の流れは3本ある。方向と要件を混同させるのが定番。

  • 被害者 → 国・公共団体:公務員に故意・過失があれば賠償請求できる(1条1項)。
  • 被害者 → 公務員個人:できない。公務員個人は被害者に直接責任を負わない(最判昭30.4.19)。賠償義務者は国・公共団体のみ(代位責任説)。
  • 国・公共団体 → 公務員:公務員に故意または重過失がある場合にのみ求償できる(1条2項)。軽過失では求償不可。

要件がずれる点が核心:被害者に対しては「過失」で足りるが、国が公務員に求償するには「故意+重過失」が要る。軽過失の公務員は、国が賠償しても最終的に自己負担しない(職務萎縮の防止)。この非対称が問われる。

触ってわかる ①

国賠責任 あり or なし — 判例ジャッジ

判例の事案を読み、国賠責任が認められたか否かを判定する。1条と2条のどちらが問題になっているかにも注目。

予想 → 答え合わせ

国賠責任 あり or なし?

判例の事案を読み、結論を予想する。判決と理由がその場で出ます。

1 / 6
宅建業者監督懈怠事件(最判平元.11.24)〔1条〕
悪質な宅建業者が多数の被害者を出していた。都知事は業者の監督権限を有していたが行使しなかった。被害者が規制権限の不行使は違法と主張。
国賠責任は認められたか?
触ってわかる ②

結論が反転する「分かれ目」を見る

1条と2条、求償権の条件、立法不作為の肯定と否定——似ているのに結論が違う4つのペアで分かれ目を体得する。

スイッチで切り替え

混同ペア弁別スイッチ

過失責任
1条 — 人のミス
公務員の違法行為。故意・過失が要件。立法行為・司法行為も含む
無過失責任
2条 — モノの欠陥
公の営造物の設置管理の瑕疵。管理者の過失は不要
分かれ目 人の行為が原因 → 1条(過失が要る)。モノの欠陥が原因 → 2条(過失は要らない)。
だから、こうなる

出題者の五つの手口

手口① 1条を「無過失責任」に変える

「国家賠償法1条の責任は無過失責任であり、公務員の故意・過失を問わない」→ 誤り。1条は過失責任。無過失責任は2条

対策:人のミス(1条)=過失が要る。モノの欠陥(2条)=過失は要らない。

手口② 公務員個人の責任を「ある」とする

「公務員に故意・過失があれば、公務員個人に対しても民法709条で直接請求できる」→ 誤り。最判昭30.4.19により、公務員個人は被害者に対し賠償責任を負わない。

対策:賠償義務者は国・公共団体のみ。公務員への求償は別の話。

手口③ 求償権の条件を「過失」に広げる

「公務員に過失があれば求償権を行使できる」→ 誤り。1条2項の求償権は故意または重過失のある場合のみ。軽過失では求償不可。

対策:求償は「故意+重過失」の2つだけ。軽過失は公務員の萎縮防止のため不可。

手口④ 立法不作為を「絶対に違法にならない」とする

「立法の不作為はいかなる場合も国賠法上違法にならない」→ 誤り。在外邦人選挙権事件(最大判平17.9.14)で立法不作為の国賠責任を肯定した先例がある。

対策:在宅投票廃止事件(否定)と在外邦人選挙権事件(肯定)の両方を覚える。

手口⑤ 未改修河川の管理瑕疵を「常に認められる」とする

「未改修河川の洪水被害は常に管理の瑕疵が認められる」→ 誤り。大東水害訴訟(最判昭59.1.26)により、未改修河川は財政的制約等を考慮した特別基準が適用される。

対策:道路は通常の安全基準。河川は治水の特殊性を考慮した緩やかな基準。

触ってわかる ③

本番の肢で、手口を見破る

演習 1 / 1条と2条

国家賠償法に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  • 国家賠償法1条の責任は無過失責任であるため、公務員に故意・過失がなくても成立する。
  • 国家賠償法2条の責任は、公の営造物の設置管理に瑕疵があれば、管理者の故意・過失を問わず成立する。
  • 国家賠償法2条の公の営造物とは、国が所有する有体物に限られる。
  • 国家賠償法1条に基づく賠償責任が成立する場合、被害者は公務員個人に対しても直接に損害賠償を請求できる。
演習 2 / 求償権

国家賠償法の求償権に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  • 国家賠償法1条に基づく求償権は、公務員に過失があればすべて行使できる。
  • 国家賠償法1条に基づく求償権は、公務員に故意がある場合にのみ行使でき、重過失では行使できない。
  • 国家賠償法1条に基づく求償権は、公務員に故意または重過失がある場合に行使できる。
  • 国家賠償法2条には求償権の規定はない。
演習 3 / 判例

国家賠償法に関する判例の趣旨として、妥当でないものはどれか。

  • 道路に落石があり通行者が負傷した場合、道路管理者の過失の有無にかかわらず、道路の管理に瑕疵があったとして国家賠償法2条の責任が認められることがある。
  • 未改修河川の氾濫による損害については、財政的制約等を考慮した判断基準を適用すべきである。
  • 立法の不作為は国家賠償法上いかなる場合も違法と評価されることはない。
  • 国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任が認められる場合、公務員個人は被害者に対して不法行為に基づく賠償責任を負わない。
本試験形式

5肢択一 模擬問題

本試験形式 1

国家賠償法に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。(法令基準日:2026-04-01)

  • 1 国家賠償法1条に基づく責任は無過失責任であり、公務員に故意・過失がなくても成立する。
  • 2 国家賠償法2条1項にいう「公の営造物」とは、国または公共団体が管理権を有する有体物を指し、所有権の帰属は問わない。
  • 3 公務員が職務を行うについて故意により他人に損害を与えた場合、被害者は当該公務員個人に対しても民法709条に基づく損害賠償を請求できる。
  • 4 国家賠償法1条2項に基づく求償権は、公務員に故意または過失がある場合に行使できる。
  • 5 外国人は国家賠償法の適用を受けることができない。
本試験形式 2

国家賠償法に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。(法令基準日:2026-04-01)

  • 1 国家賠償法3条は、公務員の給与等の費用を負担する者は、被害者に対し賠償責任を負わないとしている。
  • 2 国家賠償法2条の「設置管理の瑕疵」の判断において、道路・河川を問わず一律に「通常有すべき安全性」の基準で判断される。
  • 3 在外邦人選挙権事件(最大判平17.9.14)において、最高裁は立法の不作為は国家賠償法上いかなる場合も違法とならないと判示した。
  • 4 高知落石事件(最判昭45.8.20)において、最高裁は道路管理者の過失が立証された場合にのみ2条の責任が認められると判示した。
  • 5 国家賠償法4条は、国家賠償法に規定がない事項については民法の規定が適用されることを定めている。
自分の言葉で言うと?

国賠法1条の「費用負担者責任」(3条)とは〔 ? 〕。立法不作為が国賠法上の違法となるのは〔 ? 〕の場合。未改修河川の管理瑕疵の判断基準が道路と異なる理由は〔 ? 〕

国家賠償法 — まとめ

1条は人のミス(過失責任)、2条はモノの欠陥(無過失責任)。公務員個人への直接請求は不可。求償権は故意+重過失のみ。立法不作為は原則否定だが在外邦人選挙権事件で肯定の先例あり。未改修河川は特別基準で判断。

自分の言葉で言うと?

国賠法1条は〔 ? 〕責任(過失が要る)、2条は〔 ? 〕責任(過失は要らない)。1条の求償権は〔 ? 〕のある場合のみ。公務員個人に直接請求は〔 ? 〕

賠償

出典と基準日

  • 法令基準日:2026-04-01 現在施行の法令(令和8年度行政書士試験 想定)。
  • 根拠条文:国家賠償法1条〜6条(e-Gov法令検索)。
  • 判例:最判昭30.4.19、最判昭45.8.20(高知落石)、最判昭59.1.26(大東水害)、最判昭60.11.21(在宅投票)、最大判平17.9.14(在外邦人選挙権)、最判平元.11.24(宅建業者)(裁判所判例DB)。

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独立ファクトチェック:✅ PASS(2026-06-29 opus検証 → 条文・判例10項目照合、宅建業者事件の結論修正(ari→nashi)・二重scriptタグ修正適用済み)/ 2026-07-01 opus再検証: 追加分(1条=過失責任/2条=無過失責任・求償1条2項=故意重過失のみ・費用負担者3条・民法補充4条・相互保証6条/判例: 公務員個人免責 最判昭30.4.19・高知落石 最判昭45.8.20・大東水害 最判昭59.1.26・在宅投票 最判昭60.11.21・在外邦人 最大判平17.9.14・宅建業者 最判平元.11.24〔なし〕・多摩川水害 最判平2.12.13)を照合、誤り0件。