この章は5つの論点ユニットに生まれ変わりました。短く区切って学べて、ドリル・索引とつながっています。 新しい「原告適格」をはじめる →
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処分の「相手」でない第三者は、どこまで裁判で争えるのか。法律があなた個人を守ろうとしているかどうか=原告適格を、判例で見極める章。
マンション建設が許可された。隣の住民は怒って裁判を起こしたい。でも許可を受けたのは建設業者であって、隣の住民ではない。処分の「相手」でない人が、どこまで裁判で争えるのか?
行政書士が扱う許認可申請(建設業許可・風俗営業許可・廃棄物処理業許可など)は、申請者だけでなく周辺住民や競業者に影響を及ぼす。依頼者が「あの許可を取り消させたい」と相談してきたとき、その人に訴える資格(原告適格)があるかを即座に判断できなければ、適切な法的助言ができない。行政書士法1条の2が定める「官公署に提出する書類の作成」「不服申立ての手続きの代理」を実践するうえで、原告適格の理解は不可欠の基礎知識だ。
第一の門(処分性)をくぐった。行政庁の行為は「処分」だと認められた。だが、まだ門は残っている。第二の門で問われるのは——「あなたに、この処分を争う資格があるか?」だ。
処分の相手方(名宛人)——つまり処分を直接受けた本人——には、当然に原告適格がある。問題はいつも第三者だ。許可を受けた事業者ではなく、その周辺に住む人。営業許可の競業者。消費者。第三者がどこまで訴えられるかを決めるのが、原告適格のルールである。
第二の門の門番の問いは、こうだ。
処分の根拠法令が「社会全体のため」に規制を置いている場合、その規制からたまたま恩恵を受けている人の利益は反射的利益?法律が社会一般の利益のために置いた規制から、結果として個人が受ける事実上の利益。法律上保護された利益ではないとされる。にすぎない。反射的利益では、門を通れない。
一方、法律が「あなたの生命・身体の安全」や「あなたの営業上の利益」を個別的に守ろうとしているなら、それは法律上保護された利益?処分の根拠法令が、不特定多数の一般的利益としてではなく、個々人の個別的利益として保護する趣旨を含む場合の利益(判例・通説の「法律上保護された利益説」)。だ。門を通れる。
「原告適格がある=処分が違法」ではない。原告適格は入口(訴訟要件)の話にすぎない。第二の門を通れても、処分が違法かどうかは、門の先の本案で審理する。処分性の章で学んだ構図と同じだ。
原告適格の根拠は、行政事件訴訟法9条。1項が原則、2項が第三者のための考慮要素を定める。
処分の取消しの訴え…は、当該処分…の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者…に限り、提起することができる。(行訴法9条1項)
「法律上の利益を有する者」の解釈が、原告適格の全て。判例は法律上保護された利益説を採る。すなわち、処分の根拠法令が、不特定多数の一般的利益としてだけでなく、個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含んでいるかどうか。
改正前は、この判断が判例に丸投げされ、第三者の原告適格は狭く解される傾向があった。2004年改正で9条2項が新設され、第三者の原告適格を判断する際の考慮要素が法律に明記された。
処分の根拠法令は、何のために規制を置いているか。社会全体の安全のためだけか、それとも特定の人の利益も守ろうとしているか。
根拠法令と目的を共通にする別の法令があるとき、その趣旨・目的も参酌する。個別法だけでなく、関連する法体系全体で見る。
害されるおそれのある利益は何か。生命・身体の安全か、単なる生活環境の快適性か。利益の質が高いほど、個別保護が認められやすい。
処分が違法にされた場合、その利益がどのように、どの程度害されるか。被害が直接的・重大・回復困難であるほど、個別保護が認められる。
処分の相手方(名宛人)には当然に原告適格がある。9条2項の考慮要素が問題になるのは「処分の相手方以外の者」——つまり第三者——の原告適格を判断するときだけだ。
小田急線連続立体交差事業の認可について、沿線住民が取消しを求めた。最高裁大法廷(最大判平17.12.7)は、都市計画法と東京都環境影響評価条例等の趣旨・目的を参酌し、周辺住民の騒音等による健康被害の防止という利益を個別的に保護していると判断した。9条2項を活用した原告適格判断の最重要判例。
読むだけでは身につかない。先に自分で「あり/なし」を予想してから、判例の答え合わせをする。間違えた事案ほど、記憶に残る。
事案を読み、「あり/なし」を選ぶ。理由と判例がその場で出ます。
同じ「周辺住民」でも、結論は反転する。原子炉の近くに住めば原告適格が認められ、場外車券売場の近くに住んでも認められない。何が分かれ目かを見ていく。
タブで5つのペアを切り替え。左(あり)と右(なし)の「分かれ目」に注目。
「周辺住民なら常に原告適格がある」は誤り。もんじゅ(生命身体の安全)では肯定され、サテライト大阪(文教施設環境)では否定される。法律が守ろうとしている利益の質が、分かれ目だ。ペアで、分かれ目ごと口に出せる状態にする。
原告適格の択一は、知識だけでなく「正しそうな一般化」を見抜けるかを問うている。手口を知れば、仕掛けが見える。
「周辺住民の生活環境上の利益は反射的利益にすぎない」——一般論としては正しそうだが、生命・身体の安全に関わるなら個別的保護が認められる(もんじゅ・小田急)。
「原告適格は根拠法令の文言のみで判断する」——これは改正前の傾向。改正後は法令の趣旨目的・関係法令・利益の内容性質・害される態様程度まで見る。
「処分の相手方以外の者には一切原告適格がない」——誤り。9条2項はまさに第三者の原告適格を拡大するために新設された。
「周辺住民であれば常に原告適格がある」——もんじゅ・小田急で認められたからといって、あらゆる施設の周辺住民に認められるわけではない。サテライト大阪(場外車券売場)では否定。
過去問形式で、いまの四つの手口を実戦投入する。選ぶ前に、どの手口が仕掛けられているかを考えてみよう。
原告適格に関する次の記述のうち、判例に照らして妥当なものはどれか。
原告適格に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
行訴法9条2項が考慮要素として挙げていないものはどれか。
原告適格に関する次の記述のうち、判例に照らして妥当なものはどれか。
原告適格に関する次の記述のうち、判例および行政事件訴訟法の規定に照らして妥当なものはどれか。
原告適格は「〔 ? 〕を有する者」に限られる(行訴法9条1項)。第三者の原告適格を判断するには、根拠法令が〔 ? 〕として保護しているかを、9条2項の〔 ? 〕つの考慮要素で判断する。
原告適格とは、法律上の利益を有する者かどうか。処分の相手方は当然に原告適格あり。第三者は、根拠法令が個々人の個別的利益を保護する趣旨を含むかで判断する。9条2項の四つの考慮要素——法令の趣旨目的・関係法令・利益の内容性質・害される態様程度——を使いこなせるようにする。
原告適格があるのは〔 ? 〕を有する者。第三者の原告適格は、根拠法令が〔 ? 〕を個別的に保護しているかで判断する。